2012 Fiscal Year Research-status Report
生体分子の相互作用場を基盤にした蛍光性らせん超分子の構造転移と光機能制御
Project/Area Number |
23750229
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂尻 浩一 東京工業大学, 理工学研究科, 特任准教授 (90402213)
|
Keywords | 蛍光 / らせん構造 / 超分子 / 構造転移 / らせん反転 |
Research Abstract |
研究代表者が見出した媒体に応じて超分子構造を転移させることにより多彩な蛍光色を呈する新奇な現象について、多角的な検討を通して、当該有機化合物が形成する超分子構造と光学特性を制御する要因を解明することを目的に研究を遂行した。 対象としている化合物群はアミノ酸アルキルエステル基を導入した(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体である。今年度は、アラニンドデシルエステル基を導入したトリス―、テトラキス―、ペンタキス―、ヘキサキス―(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体(順に導入した置換基数は3,4,5,6)の超分子構造形成能力や光学特性を評価した。置換基数(対称性)によって化合物の会合力と共役系が異なるため、超分子構造と光学特性が顕著に変化することが期待され、実際に置換基数の影響を明らかにすることができたので、以下にその概要を記す。 研究実施計画通り全ての化合物の合成に成功した。置換基数の増加により希薄溶液中における超分子らせん構造の安定性が向上した。種々の分光学的な測定から、置換基数の増加により、分子間水素結合力が強固に作用し、分子間の会合を安定化させていることが明らかとなった。 超分子らせん構造の巻き方向が反転する現象はテトラキス―、ペンタキス―、ヘキサキス―(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体において確認された。反転した超分子らせん構造についても、置換基数が多いほど安定であることがわかった。また共通する特徴として、超分子らせん構造の巻き方向を反転させる溶媒組成がほぼ同一であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通りに検討を進め、置換基数の影響に関する知見を得ることができたから。
|
Strategy for Future Research Activity |
一般に、互いに鏡像関係にある異性体の等量混合物は、光学純度100%の単体と異なる性質を示す。次年度では、当初の研究実施計画通り、鏡像異性体であるD体を合成し、L体との混合物について同様な実験を行い、光学純度の影響を明らかにする。 また前年度見出したサーモトロピック液晶の相転移挙動について、並行して引き続き検討を行う予定である。具体的には、サーモトロピック液晶を発現する置換基をもつ化合物について、置換基数の異なる同族体を合成し、構造物性の評価を行う。今年度は溶液中における置換基数の影響を明らかにしたが、上述のサーモトロピック系の実験を追加することによって、固体や液晶状態での議論へ展開することができるため、一層普遍的な知見を得られることが期待される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一昨年度の研究費の慎重な使用の通達により、初年度の残額相当分が次年度使用額として残っているが、今年度交付額については概ね予定通り執行している。 新たに追加した検討課題である液晶に関する研究では、多くの試料を必要とするため、残額(次年度使用額)の主な使途は新規液晶化合物の合成にあてる。また当初の次年度交付予定額については、予定通り次年度の実施計画を遂行するために使用する。
|