2013 Fiscal Year Research-status Report
生体分子の相互作用場を基盤にした蛍光性らせん超分子の構造転移と光機能制御
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23750229
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂尻 浩一 東京工業大学, 理工学研究科, 特任准教授 (90402213)
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Keywords | 超分子 / らせん構造 / ステレオコンプレックス |
Research Abstract |
研究代表者が見出した媒体に応じて超分子構造を転移させることにより多彩な蛍光色を呈する新奇な現象について、多角的な検討を通して、当該有機化合物が形成する超分子構造と光学特性を制御する要因を解明することを目的に研究を遂行した。 対象としている化合物群はアミノ酸アルキルエステル基を導入した(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体である。一般に、互いに鏡像関係にある異性体の等量混合物は、光学純度100%の単体と異なる性質を示す。今年度は、昨年度の結果に基づき、最も安定な超分子構造を形成することができるアラニンドデシルエステル基を導入したヘキサキス(フェニルエチニル)ベンゼン誘導体のD体を新たに合成し、鏡像異性体であるL体との混合物について一連の検討を行った。 不思議なことに、超分子らせん構造を形成するL体の均一なn-アルカン溶液に、D体のn-アルカン溶液を加えたところ、凝集沈殿物が析出した。らせん構造を形成しないハロアルカン溶液ではこの現象は起こらなかった。D体とL体のn-アルカン溶液を混合することによって析出した凝集沈殿物は60度以上に加熱することによって再溶解し、室温に冷やすと再び凝集し、可逆的であった。種々の分光学的な測定から、溶解状態と凝集状態でD体とL体の超分子らせん構造は変わらず保持されていることがわかった。ポリペプチドやポリ乳酸などで見られるようなD体とL体の特有な分子認識によりステレオコンプレックスが形成されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通りに検討を進め、D体とL体の混合物の挙動を明らかにすることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、以下の検討を行う。 ●これまでの結果を総括し、超分子構造と光学特性の相関を明らかにし、制御因子の特定と各スペクトル変化の追跡を行い、らせん反転の原動力と機構を追究する。 ●重合性の媒体や樹脂との混合などにより固形化を行い、溶媒蒸気や熱などに対する発色特性を検討し、材料としての評価を行う。
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