2011 Fiscal Year Research-status Report
光誘起親水化現象の解明に繋がる新たな提案-光照射で生じる表面マクロ分極場の作用-
Project/Area Number |
23750238
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
勝又 健一 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (70550242)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光触媒 / 光誘起親水性 / 表面分極 |
Research Abstract |
本研究では、光触媒機能の一つである光誘起親水化現象に関して、これまでとは異なる新たな発現機構(光照射による表面分極場の作用)を提案して明らかにすることを目的としている。平成23年度は、光照射によって親水化する材料とその表面化学組成および光触媒酸化分解活性の関係性について、理想的な原子配列面を持つ単結晶を用いて調査を行った。 紫外光照射強度を高くした場合、ルチル型酸化チタン(001), (110)、チタン酸ストロンチウム(111), (110), (100)、ニオブ酸リチウム(x, y, zカット)において光誘起親水性に有意な面方位依存性は見られなかった。次に、紫外光照射強度を弱くしたところ、それぞれ面方位によって親水化速度や親水性(限界接触角)に差が出た。ルチル型酸化チタンでは、(110)が(001)と比較して早く親水化し、既報と一致する結果が得られた。一方、チタン酸ストロンチウムでは、(110)<(111)<(100)の順で早く親水化した。チタン酸ストロンチウムの多結晶膜は光照射によって高度に親水化しないことが分かっており、多結晶膜表面では親水化が早い(100)と(111)がほとんど露出せず、遅い(110)が最も露出しているためであることを明らかにした。次に、ニオブ酸リチウムでは、Z<X<<Yカット面の順で親水化し、特にYカット面はルチル型酸化チタンやチタン酸ストロンチウムのどの結晶面と比較しても早い親水化速度を示すことを明らかにした。 単結晶表面にオレイン酸を塗布し、光照射による酸化分解活性を調べたところ、ルチル型酸化チタンおよびニオブ酸リチウムでは高い分解活性を示す結晶面は早い親水化速度を示した結晶面と一致していた。一方、チタン酸ストロンチウムでは関係性が見られなかった。以上の結果より、分解活性の違いだけで光誘起親水性を説明できないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、光触媒機能の一つである光誘起親水化現象に関して、これまでとは異なる新たな発現機構(光照射による表面分極場の作用)を提案して明らかにすることを目的としている。平成23年度は、理想的な原子配列面を持つ単結晶を用いて光照射による光誘起親水性、表面吸着水量および表面電位変化の面方位依存性を調査する予定であったが、光誘起親水性と光触媒酸化分解活性の面方位依存性とそれらの関係性について研究を進めた結果、予定していた表面吸着量と表面電位の測定まで行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、理想的な原子配列面を持つ単結晶を用いて光照射による光誘起親水性と光触媒酸化分解活性の面方位依存性とそれらの関係性について明らかにした。平成24年度は、同じ単結晶を用いて光照射による表面吸着水量と表面電位変化を測定し、光誘起親水性との関係性を明らかにする。また、多結晶薄膜を作製し、単結晶と同様に光誘起親水性、吸着水量、表面電位を測定して光誘起親水性とその表面化学組成および水分子の吸着の関係性を調査する。 次に、光誘起親水性を示す材料(親水化が早い)と示さない材料(親水化が遅い)について、分極処理が親水性に与える効果を明らかにし、膜表面に生じる分極特性と吸着水分子の配向性の関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、予定していた表面電位変化測定まで研究を進めることができなかったため、測定に必要な消耗品(カンチレバー)を購入しなかった。平成24年度は、表面分析(表面吸着水、表面電位、表面分極)をメインに研究を行うため、分析機器と測定に必要な消耗品(カンチレバー)、薄膜試料作製のための試薬、基板、成膜のためのスピンコーターの購入を予定している。また、積極的に研究成果を発表するため、国内外の学会への参加および論文投稿費として使用予定である。
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Research Products
(2 results)