2011 Fiscal Year Research-status Report
電気化学反応における成長界面のモデル化に基づく新奇デンドライト抑制法
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23750239
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深見 一弘 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (60452322)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 二次電池 / 負極 / デンドライト / 多孔質電極 / 表面誘起溶媒和 |
Research Abstract |
亜鉛-空気電池を想定し、充電時に発現するデンドライトの成長ダイナミクスをモデル化し、デンドライト発現機構を非線形ダイナミクスの観点から明らかにすることを目指した。またデンドライトの形成の非線形ダイナミクスに立脚した新奇デンドライト抑制法を提案することを最終的な目標とした。充電時におけるデンドライトの形成は電極表面への金属イオンの供給が拡散律速で進行する場合に得られる。平坦電極を想定し、充電時における界面の成長をCoupled Map Lattice法により再現すると、簡単にデンドライトが成長してしまう。ところが、電極表面をナノメートルレベルで多孔質化し、疎水的な多孔質電極表面を想定するとデンドライトの形成が著しく抑制される可能性があることがモデル計算から明らかになった。これは、疎水性表面に比較的イオン半径の大きい金属イオンが排斥されることに由来する。また孔径が小さい程、その効果が顕著であることが予想された。実際に、多孔質シリコン電極をヒドロシリル化反応により疎水化または親水化し白金めっきを行ったところ、親水化した多孔質シリコン電極では細孔内に金属析出が確認できず、多孔質層の最表面に凹凸の激しい金属膜が析出した。一方、疎水化した多孔質シリコン電極では細孔内に均一に金属が析出した。更に、モデル計算から予想された通り、イオン半径の大きい金属錯体からめっきを行うと細孔内に析出した金属が著しく増加し、多孔質層最表面における凹凸が著しく抑制された。初年度に得られた結果は、デンドライト抑制には溶液バルク側の制御ではなく、電極の水和特性に誘起された表面極近傍の金属イオンの水和構造を制御する必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において理論および実験の両面から新奇なデンドライト抑制のための物理モデルを検証することができた。この点は当初の予想を遥かに超える成果であるといえる。一方で、初年度で得た知見をデンドライトの成長ダイナミクスの記述にどのように反映させるかが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
新奇デンドライト抑制法を多孔質電極における表面誘起溶媒和構造の観点から提案することを目指す。当初の計画では電解液中の電位分布や金属イオン濃度分布を調べる予定であった。しかし、多孔質電極内における表面誘起溶媒和構造がより本質的に重要であることが明らかになった。そこで、多孔質電極の表面修飾や評価を集中的に行う。一方、初年度に導入したワークステーションを利用し、表面誘起溶媒和構造の効果を界面の成長ダイナミクスの記述に反映させることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多孔質電極の作製やその表面修飾、または評価に研究費を集中させる。理論計算に必要な設備は初年度に全て導入済みである。また、積極的に関連学会等で発表を行う。
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Research Products
(5 results)