2012 Fiscal Year Annual Research Report
イオン伝導性酸化物における広帯域導電率測定による格子振動解析
Project/Area Number |
23750242
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90598690)
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Keywords | 酸化物イオン伝導体 / 広帯域導電スペクトル法 / 安定化ジルコニア / バルク導電率 / 格子振動パラメータ |
Research Abstract |
イオン伝導性酸化物は優れた環境調和性と高効率発電の観点から,固体酸化物燃料電池(SOFC)用の固体電解質材料としての期待が非常に高く,その実用化に向けた材料開発が活発に行われている.本研究はイオン伝導性酸化物において,電気領域(kHz~)から光領域(~THz)に及ぶ広周波数帯域での複素導電率測定を用いた格子振動解析により,マイクロスコピックな格子振動挙動とイオン伝導性との関係を定量的に解明することを目的とした. まずイオン伝導性酸化物に適用可能な広帯域導電スペクトル法の開発を行った.具体的にはイオンホッピング伝導の周波数関数を,等価回路の回路パラメータとして導入し,広帯域導電率の理論式を得た.得られた理論式により実測した複素導電率ならびに赤外反射率に対し非線形最小二乗フィッティングした.最終的に0.1Hzから100THzに及ぶ超広帯周波数での複素導電率の測定に成功した.また本手法により,光学領域で活性化する格子振動のパラメータとイオン伝導パラメータの相関を議論することが可能となっている.評価試料として,代表的な酸化物イオン伝導体であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ),イッテルビア安定化ジルコニア(YbSZ),およびガドリア安定化ジルコニア(GdSZ)の3種類を使用し実験を行った.結果,格子振動パラメータのうち減衰定数(格子振動の減衰のしやすさ)が小さくなるにつれ,バルク導電率が高くなる傾向を見出した.実際,YSZ,YbSZおよびGdSZを比較すると,粒内の酸化物イオン導電率(バルク導電率)はYbSZ>YSZ>GdSZの順となり,減衰定数の大きさはこの逆の順になることが明らかとなった. 開発した広帯域導電スペクトル法により,イオン伝導性酸化物材料において微構造(格子振動)の観点でバルク導電率の起源を定量的に議論することが可能となり,この点が本研究課題の主要成果である.
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Research Products
(6 results)