2011 Fiscal Year Research-status Report
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23750247
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
堀越 智 上智大学, 理工学部, 准教授 (50424784)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 環境保全技術 / 光触媒 / マイクロ波 / ラマン分光光度計 |
Research Abstract |
平成23年度は(1)実験で用いるTiO2の合成、(2)マイクロ波照射下でのラマン分光測定ができる装置の試作、(3)この装置を用いた測定を行った。 TiO2の試料調整ではマイクロ波効果が強く現れるTiO2(デグサP-25)や、マイクロ波を照射しても既存の熱と同じ効果しか現れないTiO2(石原産業製ST-01)の酸素の欠損や窒素のドープを行った。TiO2サンプルに酸素欠損を形成するため、水素雰囲気化で加熱焼成を行った。通常、TiO2を加熱水素還元しても、空気中の酸素により酸素欠損が消失するが、最適な温度と加熱時間により、反応後も構造を持続させることに成功した。 市販の顕微ラマン分光光度計にマイクロ波と紫外線を同時に照射できるユニットを開発した。マイクロ波の波長は12.24cm(2.45GHz)であり、顕微ラマン分光光度計のステージのサイズより大きい。そこで、金属製のサンプル台にマイクロ波のアンテナを接続したユニットを開発し、この問題を解決した。アンテナやステージの最適化は電磁界シミュレーターを用いて計算した。 マイクロ波/紫外線同時照射型顕微ラマン分光光度計を用いて各TiO2紛体の格子振動スペクトルを観測した。ST-01のラマンピークは、マイクロ波および紫外線照射を同時照射すると、その強度が急激に変化した。また、窒素をドープしても強度変化は同様に観測された。この強度の変化はTiO2の結晶格子の振動に由来することが予想され、結晶内の格子振動がマイクロ波によって誘発されることが示された。すなわち、マイクロ波エネルギーはTiO2の結晶振動に消費されることから、単にTiO2の加熱が進行しそれ以上の効果は期待できない。一方、マイクロ波効果が表れるTiO2(P-25)は、マイクロ波による格子振動が発生せず、マイクロ波が光触媒反応においても別の効果を引き出していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究では、TiO2の試料調整、ラマン分光機の試作、分析を行うことが目的である。当初の予定通り平成23年度内に、これら全ての項目が完了している。加えて、分析データからも光触媒活性に対するマイクロ波の非熱効果が観測され予想以上の結果を得ることができた。 しかし、本実験のスタート時には、申請者の職場移動や震災の影響もあり、必ずとも順調とは言えなかった。しかし、6月後半以降からは、様々な問題を克服し、研究体制を整え、本申請研究に遂行した。当初、他に例がないことからTiO2の酸素欠損の生成に長期間を要したが、ラマン分光光度計の試作も並行して行ったため、12月に光触媒の調製が完了した時点で、スムーズに分析に移ることができた。本研究の課題である、光触媒の調製と装置の試作が年内にすべて終わったため、実験の遂行も1月には完了し、2月には解析やデータ整理をすることができた。また、本研究で用いる触媒、実験手法、分析法は新規的なものが多いため、それらを利用した論文も定期的に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は過渡吸収分光計を用い、マイクロ波照射による様々な光触媒の電子状態の変化を検討する。マイクロ波照射装置は、平成21・22 年度科研費で開発したマイクロ波の磁場と電場を分ける装置を基本として、過渡吸収分光法に合わせて新規に製作する。平成23 年度に準備した光触媒を使用し、マイクロ波の磁場、電場、両方を照射しながら分光測定を行う。分析によって得られるスペクトル形状の変化は、マイクロ波による影響に加え、マイクロ波による光触媒の加熱の影響も考えられる。そのため、放射温度計に加えマイクロ波の干渉を受けない光ファイバー製の特殊温度計を用い、光触媒の温度変化を二重にモニターする。マイクロ波加熱と同じ温度条件をヒーター加熱で光触媒サンプルに与え、マイクロ波効果と熱的効果における光触媒の電子励起状態の変化を比較する。光触媒に対するマイクロ波として磁場および電場の効果があることが、私たちの選考研究から分かっており、光触媒内部の電子移動に対して、電場、磁場、熱効果がどのように影響しているかを明らかにする。また、各光触媒における誘電因子(誘電率、誘電損失、誘電損失角)や電気導電率・抵抗率の変化を計測し、スペクトル観測から得られたデータと比較検討することで、電子励起状態に変化を促すマイクロ波主成分を明確にする。 今後は、23年度に行ったラマン分光光度計および平成24年度行う予定の過渡吸収分光計のデータをリンクさせ、マイクロ波が光触媒に作用する直接因子を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究費の大半は初年度で検討するマイクロ波装置に使用したため、平成24年度は主に装置部品、試薬やガス類などの消耗品、旅費等に使用する予定である。特に、平成24年度も装置の試作を行う予定であるが、使用予定の過渡吸収分光計やマイクロ波照射装置は既存の装置を改造して使用することを予定している。
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[Journal Article] Rare direct imidation of aromatic metallacycle by reaction of CpCo(dithiolene) complex with N-halosuccinimide2011
Author(s)
M. Nomura, S. Iida, K. Seki, K, Kobayashi, G, Hagino, S, Horikoshi, T, Sugiyama, A, Sugimori, M, Kajitani
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Journal Title
J. Organometallic Chem.
Volume: 963
Pages: 1723-1728
DOI
Peer Reviewed
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