2011 Fiscal Year Research-status Report
炭酸型層状複水酸化物への直接イオン交換法の確立とそのメカニズムの解明
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23750248
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
林 亜紀 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (80309434)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 炭酸型層状複水酸化物 / 脱炭酸 |
Research Abstract |
主に、炭酸型層状複水酸化物と鎖状及び芳香族カルボン酸との反応、無機イオンとの交換反応について、有機溶媒を用いて検討した。有機溶媒にはメタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、ヘキサンを用いたところ、メタノールが最も反応が進行しやすく、ヘキサンでは全く反応しなかった。このことは、プロトン性の極性溶媒を用いる方が層間の炭酸イオンが炭酸水素イオンとなって脱炭酸されやすいことを示唆している。さらに、高い温度の方がより反応が進行したことから、この反応は温度の影響を大きく受けることがわかった。カルボン酸化合物では、炭素数の増加とともに層間距離は増加し、鎖状カルボン酸はバイレイヤー構造、芳香族カルボン酸はモノレイヤー構造を層間で形成していることが明らかになった。これは、鎖状カルボン酸の取り込み量が、芳香族カルボン酸よりも多いことと一致しており、鎖状カルボン酸の方が反応性は高いといえる。また、取り込み量はどちらのカルボン酸も炭素数が2で最大となり、その後炭素数の増加とともに減少した。炭素数の短い水に可溶なカルボン酸について、一般的な水溶液中での硝酸型層状複水酸化物との反応を行い得られた化合物と比較すると、層間距離はほとんど同じであった。このように、水に不溶な化合物でも、メタノールに溶解することで、層状複水酸化物との複合体の形成が可能となった。一方、無機イオンとして、塩化物イオン、硝酸イオン、臭化物イオンと炭酸型層状複水酸化物の炭酸イオンとの交換を検討した結果、メタノール中で速やかに交換することがわかった。塩素型や硝酸型層状複水酸化物とは水溶液中でも交換するが、副反応として炭酸イオンの混入が見られる。しかし、メタノールを用いて炭酸型層状複水酸化物と交換した場合には、炭酸イオンの混入がほとんど見られないことがIR測定より確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画は、炭酸型層状複水酸化物との反応において、溶媒の影響、交換しようとする化合物の構造や溶解度の影響を調べることであった。いくつか反応条件を検討した結果、有機溶媒はプロトン性極性溶媒のメタノール、反応温度は50度で行うと反応が進行しやすく、さらには反応中の炭酸イオンの混入を防ぐことを見いだした。また、鎖状及び芳香族カルボン酸化合物の炭酸型層状複水酸化物との反応の傾向が明らかになったこと、水に不溶な化合物でも溶媒にメタノールを用い、炭酸型層状複水酸化物と反応すると、層状複水酸化物との複合体を形成できることが明らかになった。これより、今後のイオン交換反応におけるゲスト化合物の反応性の予測ができ、広く応用できると期待される。よって、平成23年度の計画をおおむね達成できたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、他の陰イオン性官能基であるスルホン酸塩や硫酸塩を有する化合物、2つの官能基を有するカルボン酸化合物についての反応性を検討中であり、様々な陰イオン性化合物や芳香族化合物について今後検討する。さらに、炭酸型層状複水酸化物は制酸剤でもあることから医薬品との複合体の形成も検討する予定である。また、炭酸型層状複水酸化物を出発物質とする様々なイオン型層状複水酸化物の簡便な合成方法、条件を確立する。しかし、溶媒にアルコールが適している理由やそのメカニズムについてはいまだ不明であるため、熱力学的パラメーターや粒径、表面積、層間又は溶媒中の水の影響、層状複水酸化物のMgとAlの比の影響などについても検討し解明していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、主に試薬や液体窒素などの消耗品の購入に使用する予定である。旅費として、9月に韓国で行われるAsian Clay、来年3月に行われる日本化学会春季年会及び日本薬学会年会に参加、発表する予定でありその際に使用する。
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