側鎖液晶型両親媒性マルチブロックコポリマー膜の開発とミクロ相分離構造評価

2011 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 23750252
• Research Institution: Tokyo Institute of Technology
• Principal Investigator: 波多野 慎悟 東京工業大学, フロンティア研究機構, 研究員 (70397157)
• Project Period (FY): 2011-04-28 – 2013-03-31
• Keywords: ブロックコポリマー / 液晶 / ミクロ相分離構造 / テンプレート

Research Abstract

ブロックコポリマーをテンプレートとして用いる際、構造周期を小さくするためにはブロックコポリマーを構成する各成分の重合度を抑える必要があるが、分子量の低下は成膜性の低下を招く。申請者はポリマー構造をマルチブロック構造にすることにより、このジレンマを解決できると考え、本課題ではマルチブロックコポリマーの合成とミクロ相分離構造の調査を行っている。平成２３年度の研究では親水性ポリエチレンオキシド(PEO)と疎水性液晶ポリメタクリル酸エステル(PMA(Az))からなる直鎖型トリブロックコポリマー(PMA(Az)m-b-PEOn-b-PMA(Az)m,(m,n)=(15,90),(27,90),(35,90),(78,90),(14,250),(39,250))を合成した。(以後"m-n-m"で記す)得られたポリマーを製膜および熱アニールした後、斜入射小角X線散乱法および透過型電子顕微鏡を用いてミクロ相分離構造の解析を行った結果、全ての薄膜においてPEOがシリンダードメインを形成していた。この結果はPEOの体積分率から考えると特異的であり、液晶の配向がPEOのドメイン構造に強く影響を及ぼすことが示唆された。また、相分離構造の周期性は各ブロックの重合度に強く依存し、15-90-15ではシリンダー中心間距離が10.4nm、ヘキサゴナル配列における周期が9.0nmであった。申請者の研究室で過去に合成したジブロックポリマーの周期構造と比べると、本トリブロックコポリマーでは２倍以上の分子量を持ちながら同レベルの微細なミクロ相分離構造を示す、世界最小周期構造ミクロ相分離構造薄膜への指標となる結果が得られた。さらに、熱分析によりn=90のトリブロックコポリマーではPEOドメインの融点が0℃以下であり、室温においてシリンダーが結晶化することのない、金属ナノ構造体形成に適した構造であることが確認された。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初の予定では、直鎖型のトリブロックコポリマーの他に分岐型のトリブロックコポリマーの合成と構造解析も進める予定であったが、実際には直鎖型のトリブロックコポリマーの合成のみにとどまっている。本業のプロジェクトに要する時間が多く、あまり本課題に時間を使えなかったことも要因の一つであるが、直鎖型トリブロックコポリマーの熱分析で得られた結果が、申請者の予想を超えた非常に興味深い結果であり、その結果を丁寧に調査していたことが大きな要因である。したがって、研究計画の面から見れば本課題の進捗状況はやや遅れていると判断するのが妥当であるが、(1)ポリマーの分子量とミクロ相分離構造の相関において世界最小周期のテンプレートとなりうる指標がみえたこと、(2)テンプレート工学の観点から非常に興味深い低融点のPEOシリンダードメインが観察されたこと、という得られた成果は、研究の目的に十分則していると考えている。

Strategy for Future Research Activity

申請時、入手できることを前提に計画していた分岐型・一官能性のPEO前駆体の入手が困難になったため、本年度の研究では前年度合成を予定していた分岐型(A-B2)トリブロックポリマーおよびダンベル型(B2-A-B2)ペンタブロックコポリマーの合成を行い、そのミクロ相分離構造の調査を進めていく。また、これらのマルチブロックポリマーと前年度に合成した直鎖型トリブロックコポリマーの結果を併せて、マルチブロックコポリマーにおけるミクロ相分離構造や熱物性を系統的に考察する。また、作製したブロックコポリマー薄膜が、実際に金属ナノ構造体作製のためのテンプレートとなり得るか、実際に作製を試みて評価を行う予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成２３年度の予算執行については年度上半期においては研究室に既に在庫のあった試薬、消耗品を使用して研究を進めていたため、研究費を使用していなかった。また、下半期では高知大学への転出が決まったこともあり、予算の執行額の残額を平成２４年度の研究立ち上げに転用することを考え、研究上最低限必要であった分子量測定用のカラムのみの購入にとどめた。したがって、２３年度の予算残額は本研究を遂行するための環境整備（主に合成のためのライン構築）と実験器具の整備に充てる予定である。本来今年度いただくことになっていた予算も同様に環境整備に一部使用するかもしれないが、大部分は従来の予定通り、研究上の消耗品や試薬の購入に充てる予定である。また、前年度に得られた知見を学会発表するときや、得られた成果に関して他大学の研究者と打ち合わせを行う際の旅費などに充てる予定である。