2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23750253
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
廣垣 和正 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00512740)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 有機金属錯体 / ナイロン6繊維 / 導電性繊維 / 金属複合化 |
Research Abstract |
超臨界二酸炭素を媒体に繊維へ有機金属錯体を注入した後、水素を作用させ錯体を分解することで、繊維内部で錯体から遊離した金属が析出する。これにより繊維内部に金属を複合化して導電性繊維を調製する技術の確立と機構の解明を目的とし、H23年度はナイロンなどの汎用繊維に対して親和性の高い金属錯体を探索し、その繊維への吸着・拡散挙動を検討した。金属錯体には種々の銅、パラジウム錯体および、それらの混合物を用いた。ナイロン6布帛に対し、Palladium(II) acetylacetonateおよびPalladium(II) acetateを1:1で混合したものを用い、錯体量を100%owfとして浴比1:250、120℃、25MPa、15hの条件で繊維に錯体を注入した後、錯体量の10mol当量の水素を120℃、0.5MPa、3hで作用させることで、繊維に効率よく金属を複合化できた。処理後の布帛はca.10%の重量増加が見られ、繊維表面近傍の錯体分解率はca.50%、金属含有率はca.10atmic%であり、体積抵抗率は90.4 Ω・cmまで低下した。繊維の表面近傍にはca.200nmの均一な金属層が形成され、表面から内部にかけて金属パラジウムに加えナイロン由来の窒素元素が存在し、金属層の繊維内部への複合化が確認された。繊維の抵抗率が金属複合化率の増加に対して指数関数的に低下することを見出しており、繊維への錯体の注入率および、注入した錯体の分解率を高め、金属複合化率を向上させることで、さらなる体積抵抗率の低下が期待できる。本年度は、バッチ式処理装置(一定量の錯体・水素で処理)を用いたが、金属複合化率の向上に限界があるため、フロー式処理装置(錯体・水素を連続して繊維の処理槽へ供給)を作製した。現在は、本装置を用いてナイロン繊維に対する金属錯体の吸着・拡散挙動の測定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、汎用繊維に対して超臨界二酸化炭素媒体中で繊維に高い親和性を有する金属錯体を探索し、繊維内への錯体の吸着および拡散挙動を明らかにすることを計画した。Palladium(II) acetylacetonateおよび、Palladium(II) acetateの重量比1:1の混合物がナイロン6繊維に対して親和性が高いことを見出し、繊維内部への金属の複合化を実現して布帛の体積抵抗率を未処理布の>10^15(15乗)Ω・cm から10^1(1乗)Ω・cmのオーダーまで低下させることができた。また、繊維への錯体の吸着・拡散挙動を測定する装置を完成させた。装置の調整に時間がかかり吸着・拡散挙動の測定がわずかに遅れているが、超臨界二酸化炭素を媒体とした繊維への錯体の注入条件として120℃、25MPaが有効であることを見出しており、現在、測定を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
超臨界二酸化炭素媒体中での繊維内への有機金属錯体の吸着および拡散挙動の測定をH23年度に引き続き進める。また、当初の計画どおり、ナイロンなど汎用繊維に対して水素還元により繊維内部で錯体から遊離した金属が凝集し析出する挙動を明らかにするべく、種々の条件(温度、圧力、超臨界二酸化炭素との共存、濃度など)で水素還元処理を行う。還元により繊維内に析出する金属微粒子の分散状態をTEMやEDX、XPSおよびICPなどの各種分析を行い調査し、錯体から遊離した金属の凝集と還元条件の関係を明らかにして、金属の繊維内での分散構造を制御する方法を確立する。また、金属を複合化した繊維の導電性と繊維内の金属量および分散状態との関係を調べ、繊維内を電子が効率よく伝達し高い導電性を達成できる複合構造を明らかにして繊維の導電特性を向上させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、H23年度に引き続き進める、超臨界二酸化炭素媒体中での繊維内への有機金属錯体の吸着および拡散挙動の測定に必要な実験消耗品(繊維、有機金属錯体、高圧装置消耗品など)購入費および、分析器使用料(EDX、XPS、ICPなど)に使用する。
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