2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトケミストリー法による白金族・貴金属酸化物超伝導体の探索
Project/Area Number |
23760007
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
上田 真也 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導線材ユニット, NIMSポスドク研究員 (60442729)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電気化学合成 / 有機溶媒 / イオン液体 / 超伝導材料 / MgB2 / 低温合成 |
Research Abstract |
本研究は、強い共有結合を有する遷移金属複合酸化物が高温超伝導の高いポテンシャルを有すると考えて新物質探索を行った。遷移金属酸化物の多くはイオン結合物質であるが、共有結合性の強い酸化物を探す一つの手段は結晶構造や配位に着目することである。遷移金属酸化物が通常とる六配位の八面体構造ではなく平面四配位構造が候補となるが、こうした配位構造を取りうる金属は、Cuの他に白金族・貴金属のCo, Ni、Pd、Pt及びAg、Au等が挙げられる。中でもPd、Pt、Ag、Auの遷移金属元素のd軌道のエネルギー準位は原子核の電荷が大きいためにもともと深く、O2p軌道と接近して強い混成を起こし共有結合を形成しやすいと考えられる。ただし、これらの難酸化金属の酸化物合成は通常困難である。 本研究では、初年度にコバルト酸化物の合成を試み、アルカリ金属炭酸塩を用いたFlux法により、Ruddlesden-Popper構造(以下RP構造)のn=2にあたるCo酸化物Sr3Co207-dの単結晶育成、さらにn=3にあたるSr4Co3Cl2O7.5+dの単結晶育成に初めて成功した。コバルトは周期表の同列にある貴金属ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)よりも酸化しやすいことから一般的には貴金属には含まれないが、同じ電子配置を有することから本研究の対象であり、かつ貴金属の酸化物よりも合成が容易である。ただし、現在までにこれらの物質の超伝導化には成功していない。 そこで、次年度および最終年度は新規な貴金属を含む酸化物材料探索を行い、そのための新しい電気化学合成手法を開発した。本手法の特徴は、反応場として有機溶媒に少量のイオン液体を添加した溶媒を用いることであり、これによって2元系超伝導材料(MgB2)の室温合成に成功している。本手法は、申請書で提案した水酸化アルカリを溶媒として用いた場合よりも低温での合成を可能とし、貴金属の酸化物合成に大変有効である。
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