2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760009
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 孝仁 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60583151)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 酸化物半導体 / ワイドギャップ半導体 / 酸化ガリウム |
Research Abstract |
本研究の最終目的は,デバイス応用を目指した薄膜の基盤技術の確立である.まず,バンドギャップ制御の観点から酸化ガリウム(Ga2O3)系半導体薄膜を,透過性の高いc面サファイア基板上にPLD法でヘテロ成長させた.基板と膜の結晶構造が異なるため,Ga2O3薄膜に対して,詳細なX線構造解析を行った.薄膜は,(-201)配向したβ単相のGa2O3であり,面内に6回回転ドメインを持つことを示し,基板表面の3回回転対称を持つテラスと,1ステップ下った180度回転したテラスの回転対称性に由来することを明らかにした. (AlGa)2O3混晶薄膜においては,Al組成の増大とともに,透過率の吸収端が高エネルギ側に単調にシフトし,Al組成0.22では,バンドギャップが5.5 eVまで拡大した.結晶構造,組成分析について今後詳細に解析する必要があるが,Al2O3との混晶化によりバンドギャップが拡大し,ヘテロデバイスへの展開が可能であることを示した.一方で,タムラ製作所との共同研究により,導電性Ga2O3単結晶基板の提供を受け,パルスレーザ堆積法を用いて,ホモエピタキシーにも取り組んだ.条件探索の結果,表面粗さは,0.27 nm程度であり,ステップ,テラス構造が明瞭に確認できる平坦性,結晶性ともに良好な薄膜を得た.この良質な薄膜成長達成により,Ga2O3系薄膜の不純物ドーピングによる導電性制御とバンドギャップ制御を同時に進めるための基盤が確立できた. Ga2O3系薄膜の新たなテーマとして,ミストCVDによる準安定である相γ相薄膜の作製に試みた.これには,立方晶系であるγ相と結晶構造のよく似たスピネル基板を用い,基板によるエピタキシャル力を利用してほぼ単相のγ相薄膜を得ることに成功した.最安定のβ相,準安定のα相の薄膜作製例は数多くあるが,γ相の作製例はほぼ皆無であるため,その物性解明が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
デバイス応用を目指した薄膜の基盤技術確立の前段階としてバンドギャップ制御と導電性制御を達成する必要がある.それらの制御が確立した後に,ショットキーバリアダイオードや変調ドープ構造を作製して,薄膜の性能試験をデバイス特性評価により行なう.これが,当初行なうべき予定であった. バンドギャップ制御においては,サファイア基板上にAl組成の異なる膜を作製して,バンドギャップの拡大を確認した段階である.今後,β相を維持しつつどこまで高Al 組成を維持できるか検討する必要がある.一方で,導電性制御に関しては,全く行なっていない. このように遅れた理由としては,Ga2O3が唯一持つβガリア構造に適合するヘテロ基板が無いことに起因するものと考えられる.今後,良質な結晶を得られる単結晶Ga2O3単結晶基板を用いた成長を切り口に混晶薄膜を含めた不純物ドーピング実験を進めていく必要がある.以上PLD法を用いた薄膜成長における達成度は,まだ序盤であるが今後研究速度が加速すると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
3つの薄膜作製手法で研究を推進する. PLD法による混晶薄膜の作製評価を継続し,不純物ドープ薄膜作製を開始する.そして,共同研究により提供を受けるGa2O3単結晶基板を有効活用し,高品質の薄膜作製を計画書通りに進行させる.さらに,当研究室のコンビナトリアル手法を用い,不純物濃度傾斜,Al組成傾斜薄膜を作製,評価し,その物性制御指針を迅速に確立する.所望の薄膜を成長する条件を確立した後に,ショットキーバリアダイオードや変調ドープ構造を作製,評価し,デバイス特性と薄膜構造を関連付けて議論する.最終的に良好な特性が得られる薄膜の条件を提案する. ミストCVD法によって新たな結晶相であるγ単相Ga2O3薄膜を作製する.さらに,β相に対してγ相の物性は未解明の状態であるため,格子定数,バンドギャップ,屈折率,移動度,相転移温度などの基礎物性を解明する.なお,現在はホットウォール型であるミストCVD装置を,より準安定相作製に適したコールドウォール型に改良し,さらにコンビナトリアル手法を取り入れ,基板温度傾斜可能な基板加熱機構を設計,導入する.これにより,大幅に研究が進展するものと考えている. さらに,新たな研究テーマとして,酸素分圧制御熱処理によるキャリア濃度制御に取り組む.これは,酸化物単結晶基板表面近傍の酸素欠損を簡便な熱処理により制御するものである.薄膜成長装置を用いずともキャリア濃度制御が可能になるものなると予想される.そのために,酸素分圧を制御可能で,かつ単結晶基板を高温熱処理,急冷できるシステムを構築する.熱処理温度,酸素分圧,熱処理時間をパラメータとして,基板の熱処理を行い,そのキャリア濃度の深さ依存性から活性化エネルギ,拡散定数を求める.最終的に,パラメータを変数として,任意のキャリア濃度を任意の厚みで得られるように定式化する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PLD成長では,原料として(AlGa)2O3混晶ターゲット, Sn, SiドープGa2O3ターゲットを主に購入する.それぞれ約10万円の特注ターゲットであり,30~40万円を必要とする. ミストCVDでは,新規設計のコールドウォールCVD装置を発注する.すでに,本若手Bの23年度予算で大まかなところは作製済みであるが,ガス導入系や,基板加熱制御機構などの追加発注で30万円程度必要となる.雰囲気熱処理は,新たな熱処理システムを既存設備と組み合わせながら構築する.試料搬送機構など,総額で20~30万円程度になると予想している. また,学会関係として,国際会議ISCS2012(アメリカ,USCB),第31回電子材料シンポジウム(静岡県 ラフォーレ琵琶湖),秋季,春季応用物理学会(愛媛大学,神奈川工科大学)出席のため,50万円程度を使用予定である.さらに,論文投稿料約10万円,その他,適宜必要な薬品,ガス,手袋などの消耗資材,書籍を購入する.
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Research Products
(4 results)