2011 Fiscal Year Research-status Report
多色量子ドットのモノリシック成長によるスペクトル制御可能な近赤外広帯域光源の開発
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23760015
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
尾崎 信彦 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30344873)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 量子ドット / MBE / 選択領域成長 / 近赤外広帯域光源 / OCT |
Research Abstract |
本研究の目的は、エピタキシャルInAs量子ドット(InAs-QD)の領域および波長選択成長技術を用いて、OCT応用に向けた広帯域かつスペクトル形状制御可能な近赤外光源を実現することである。H23年度は、総研究期間2年の前半(1年目)にあたり、我々がこれまで開発してきたメタルマスク法とMBE成長の融合によるQDの領域および波長選択成長技術を発展させて、4つの異なる発光中心波長をもったInAs-QDをモノリシックに成長させ、発光広帯域化がどこまで可能かを明らかにした。 新規に開発した90度回転式メタルマスク法によって、同一基板上の4つの並列領域にInAs-QDを選択成長させ、さらに各QD上に歪緩和層を異なる厚さで積層することで発光中心波長を制御した。歪緩和層の厚さを制御することで、4つのInAs-QDの中心波長を40nmずつ離調し、およそ1180~1300nmの範囲で約120nmの発光中心波長シフトを達成した。この4色のInAs-QDの基底準位間発光スペクトルの和は帯域約160nmになり、各QDの励起準位間発光も寄与した場合、帯域は200nm以上確保できると考えられる。このとき、OCTの分解能は4ミクロン以下となり、従来光源を超える分解能を達成できる可能性が示された。また、得られた4色のInAs-QDを含むサンプル基板に対して、リッジ型光導波路を微細加工によって作製し、レーザー光励起による複数のQD発光の合成スペクトルが、導波路端面から出射されることも確認した。 以上の結果から、本研究の目的であるスペクトル形状制御可能な光源素子作製へ向けて研究が順調に進展しており、今後のさらなる研究推進が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2年計画であり、1年目にあたるH23年度では、交付申請書の実施計画において以下の目標を掲げた。(平成23年度)・多波長量子ドットのモノリシック成長まず、多波長QDのモノリシック成長とその評価を行う。QDの作製は申請者が和歌山大学に現有のMBE装置を用いて行なう。さらに、領域および波長選択成長のためにメタルマスクを新規に作製する。これまで2色の量子ドットを作製するのに開発してきた180度回転式メタルマスクを、今回はさらに4色に多色化させるため、90度回転式にする。2mm×8mm程度の開口部を4箇所設けたメタルマスクをMBE成長時に基板に被覆し、開口部下のみにQDを選択成長させ、QD成長後に歪緩和層(InGaAs)を異なる厚さ(0~6nm)で積層することにより、QD波長を長波長側へシフトさせる。マスクを90度ずつ回転させることで4色の量子ドットを基板上にモノリシックに形成する。先述の研究実施概要で述べたとおり、現在までに上記の実施計画を順調に達成しており、現時点で研究が滞りなく進展していると判断できる。また、次年度に向けた予備実験も成功しており、このまま推移していけば本研究の全体的な目的は十分達成できるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、H23年度で4色のInAs-QDを含む基板を作製することができた。今後は、この基板を用いて、広帯域かつスペクトル形状制御可能なSLD素子の作製と評価を行う予定である。具体的なSLD素子の形態は、研究協力者らの助言を仰ぎながら詳細を詰める予定であるが、基本的には、電流注入を可能にするため、QD層前後はn型およびp型のGaAs, AlGaAsドープ層を積層し、4色QDを含む光導波路と各QD領域に個別にコンタクトする電極(マルチコンタクト電極)を設ける。フォトリソグラフィーや真空蒸着により4色のQD作製領域を貫く光導波路と電流注入用電極を各領域に設け(マルチコンタクト構造)、SLD発光とスペクトル形状制御を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主として、SLD素子作製や評価を行う上で必要となる装置や、微細加工を行う上で利用する施設の使用料などに充てる予定である。また、研究成果を発表するための学会参加費および旅費や、論文投稿料などに使用する。
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Research Products
(9 results)