2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ欠陥を導入した希土類系高温超伝導薄膜のキャリア密度制御による高性能化
Project/Area Number |
23760020
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
春田 正和 高知工科大学, 工学部, 助教 (90580605)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 高温超伝導薄膜 / パルスレーザ堆積 / Nd:YAGレーザ / 臨界電流密度 / 臨界電流特性 / 結晶欠陥 / ナノロッド |
Research Abstract |
液体窒素温度かつ磁場下において、実用レベルの臨界電流密度(Jc)を有する希土類系高温超伝導(RE123)薄膜の作製を目指して、RE123薄膜中にナノサイズの柱状欠陥(ナノロッド)を導入した。これまでの研究により、パルスレーザ堆積法により作製したナノロッド導入RE123薄膜のJc特性が成膜温度(Ts)に強く依存することが明らかとなった。さらに、超伝導母相の希土類種によってJc特性のTs依存性が異なることが明らかとなって来た。このため、各母相組成におけるTsとナノロッド形態の関係に着目した。 ナノロッド材料としてBa-Nb-Oを添加したY123およびEr123薄膜をTsを変化させて作製した。Y系ではTsの増加に伴いJcが向上しており、この薄膜の微細組織を透過型電子顕微鏡により観察した。Tsの増加に伴いナノロッドの形態は、短く、曲がった形状から、真直ぐと薄膜を貫くような形状に大きく変化していた。一方Er系では、Tsの増加に伴いJcが低下した。ナノロッドの形態はTsにあまり依存していなかったが、Tsの増加に伴いナノロッドの密度が減少していた。このように、ナノロッドの密度および形態に依存してJc特性が変化することに加え、そのTs依存性が超伝導母相組成により異なることが明らかとなった。 成膜温度による特性変化は、高温超伝導線材の製造において大きな問題である。この問題に対して、YとErの2種類の希土類を混合した超伝導母相にナノロッドを導入することにより、Tsに依存しないJc特性を有するRE123薄膜の作製に成功した。(Y,Er)123薄膜においては、ナノロッドの形態および密度がTsにほとんど依存しておらず、均一な微細組織が形成されていた。本研究結果により、多少の製造温度の変動に対しても空間的に均一で高い臨界電流特性を有する長尺のRE123線材の製造が可能になる。
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