2011 Fiscal Year Research-status Report
絶縁性ナノ構造の発光特性評価に適したカソードルミネッセンス顕微分光法の開発
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23760022
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
渡辺 健太郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (40582078)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 走査電子顕微鏡 / カソードルミネッセンス / 低速電子線 |
Research Abstract |
ナノ空間分解能を有する局所発光特性評価技術は、半導体ナノ構造を光デバイス等に応用する上で必須である。走査電子顕微鏡カソードルミネッセンス(SEM-CL)法は試料の局所発光特性をサブμm空間分解能、高S/Nで簡便に評価可能であるが、空間分解能が不十分である。また、ワイドギャップ半導体材料やSiO2膜被覆材料は半絶縁性であり、試料表面の帯電による空間分解能の劣化が問題となる。低速電子ビーム(~1keV)を評価に用いた場合、試料内部への電子線侵入深さが浅く、信号の空間分解能が向上するだけでなく、一次電子注入量と二次電子放出量を等しくとって絶縁性試料の帯電を防止することができる。本研究の目的は、電子線侵入深さおよび電子ビーム径がいずれも10nm以下の低速電子(~1keV)ビームを実現し、半絶縁性ナノ構造試料のCL評価を10nm程度の空間分解能で行うことである。平成23年度は、以下のことを行った。・既存のSEM-CL装置における電子ビーム径を評価した。・既存のSEM-CL装置においてGNDに対して試料ステージに負の電圧バイアスを印加して電子ビームの減速場を形成し、加速電圧1kV近傍での低速電子ビームによる二次電子像が減速場の印加によって受ける影響を調べた。・減速場電極を取り付けたピエゾ駆動プローバーをCLミラーとSEM鏡筒との間に設置し、減速場電極の位置を外部から制御しながら減速場電極の位置を最適化するため、我々が既に所有するピエゾ駆動プローバーを装置に導入した。・ZnOナノロッド試料やErドープ高密度Siナノ結晶構造などの半絶縁性ナノ構造材料に対し、1~3keVの低速電子ビームを用いて、導電膜コートなしでCL評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、以下のことを行った。・既存のSEM-CL装置における電子ビーム径を評価した。例えば、0.5keV,0.5nAの電子ビーム径は80nm程度であった。・SEM鏡筒の加速電圧を上げるとビームがより強く収束されるため、SEM鏡筒と試料の間で電子ビームを減速するような電子ビーム減速場を形成すれば、ビーム径の小さな低速電子ビームが得られる可能性がある。まず、既存のSEM-CL装置においてGNDに対して試料ステージに負の電圧バイアスを印加して電子ビームの減速場を形成し、加速電圧1kV近傍での低速電子ビームによる二次電子像が減速場の印加によって受ける影響を調べた。ZnO試料への電子線侵入深さは5nm程度である。先の加速電圧条件0.5keVでは、0.1kV程度の減速場電極電圧バイアスを印加しても、電子ビーム(0.4keV)のボケはほとんど見られなかった。しかしながら、加速電圧2kVにおいて、減速場を1keV程度まで徐々に減速場電極電圧バイアスを上げていくと、放電が起きてしまい、それ以上電圧バイアスを印加出来なかった。今後、放電が起きないような工夫が必要である。・減速場電極を取り付けたピエゾ駆動プローバーをCLミラーとSEM鏡筒との間に設置できれば、減速場電極の位置を外部から制御することができ、減速場電極の位置をより効率よく最適化できる。このため、我々が所有するピエゾ駆動プローバーを装置に導入した。・ZnOナノロッド試料やErドープ高密度Siナノ結晶構造などの半絶縁性ナノ構造材料に対し、1~3keVの低速電子ビームを評価に用いれば、導電膜コートなしで評価可能であることを確認した。加速電圧に対して帯電が敏感なため、加速電圧の設定は1nAの電子線に対し、0.1keVオーダーで行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は以下の指針で研究を行う。・減速場電極を作製する。また、GND-減速場電極間で尖った部品をなくすなど、放電が起きないような工夫をする。・加速電圧と減速場電極電圧バイアスを変えていくと、試料上で同じエネルギーの電子ビームであっても、その径が異なる。2次電子放出率の異なる平坦なナイフエッジ試料を用いて、二次電子像の空間分解能で電子ビーム径評価を行い、加速電圧と減速電圧(Vret)の最適化を図る。シミュレーションが必要であれば、これを行う。・寸法が既知の導電性ナノ構造試料でCL空間分解能評価を行い、減速場の適用によってCL空間分解能がどの程度向上するか調べる。・さまざまな半絶縁性ナノ構造材料に対し、1~3keVの低速電子ビームを用いて高空間分解能CL評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究費の用途を以下のように考えている。・加速電圧・減速電圧の最適化を行うためのシミュレーションソフトウェア・減速場電極の開発・標準試料の作成等のための共用設備利用経費・研究発表費用
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] ErドープしたSi過剰SiO2膜のカソードルミネッセンス評価2011
Author(s)
渡辺健太郎,Sébastien Cueff, Benjamin Dierre, Christophe Labbé, Filippo Fabbri, Xavier Portier, Richard Rizk, 関口隆史
Organizer
2011年秋季<第72回>応用物理学会
Place of Presentation
山形大学小石川キャンパス
Year and Date
2011年8月