2011 Fiscal Year Research-status Report
グラファイト表面における分子ビームおよびラジカルビームの吸着・散乱特性
Project/Area Number |
23760024
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70373305)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | グラファイト / 超音速分子線 |
Research Abstract |
清浄なグラファイト表面における一酸化炭素分子と窒素分子それぞれの衝突散乱過程を、超音速分子線を用いた散乱計測実験と理論散乱モデル計算解析から明らかにした。具体的には、分子が表面に衝突する際に分子の運動エネルギーが、表面の格子振動、即ちフォノンエネルギーや分子の回転エネルギーに変換される割合が、分子の構造や、分子の衝突運動エネルギー、および表面の温度の変化に対して、それぞれどのように変化するのかを超音速分子線の散乱強度角度分布計測と米国のMansonらが最近確立させた理論モデル計算を基に解析した。一酸化炭素と窒素とは質量が極めて近い分子であり、分子中心と重心位置との違いが及ぼすエネルギー移動への変化の知見が得られることが期待されるため選択した。 この結果、分子構造や分子の持つダイポールの大きさによらず、どちらの分子の場合もグラファイト表面の炭素原子10.8個分(グラファイトリング1.8個分)の質点と衝突をした場合の古典力学的描像で分子の衝突散乱を記述できることが明らかになった。これはグラファイトが炭素1個ではなくCC結合によってつながった複数個の炭素原子団で協奏的運動をして分子衝突に応答していることを意味している。エネルギー移動は、具体的には表面温度150 Kから400 Kおよび入射エネルギー275 meVから600 meVの範囲において、分子の約40 %の並進運動エネルギーが衝突によって失われることが明らかとなった。表面温度と入射エネルギーそれぞれの増加に伴い、散乱後の分子の回転温度が線形に増加することも明らかとなった。いずれも一回衝突過程を経た散乱過程であり、この実験条件下において正常なグラファイト表面では際立った吸着過程は存在しないことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラファイト表面における分子散乱実験を行い、新たな知見を得ることができた。しかしながらラジカルビームはラジカル種の安定的な生成が予想通り容易ではないため、引き続き調整が必要な段階にある。このような状況のため「おおむね順調に進展している」と評価をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き分子ビーム、ラジカルビームとグラファイト表面との相互作用を、それぞれ超音速分子線技術を用いて解析する。特に、ラジカル種が絡むと考えられる電子ドープグラファイト表面を生成し、ラジカル種とグラファイトの相互作用がどのようなプロセスにおいて起きるかのモデルシステムを構築して明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料として用いている消耗品の高配向性熱分解グラファイトを今年度から少し予定より多めに使用することになるが、前年度の繰り越し予算を利用して購入する予定である。 このほか、次年度の研究費は分子線ノズルと加熱ヒータセット、分子線コリメータや分子線用高純度ガス、ICF銅ガスケットなどの消耗品に使用する予定である。
|