2012 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属極薄膜直下におけるシリコン酸化促進反応の解析
Project/Area Number |
23760027
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大野 真也 横浜国立大学, 工学研究院, 特別研究教員 (00377095)
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Keywords | 酸化反応 / シリコン / 遷移金属 / 光電子分光 |
Research Abstract |
本研究課題の目標は、遷移金属薄膜直下におけるシリコン酸化のメカニズムを解明することである。この研究の過程で、単原子層程度のシリコン酸化膜上に遷移金属を蒸着した場合に高酸化状態(Si3+,Si4+)が形成され、低酸化状態(Si1+,Si2+)が減少することが分かった。ただし、化学シフトが酸素原子の吸着位置の変化によるものか、電荷移動によるものかは十分には明確にできていない。チタンの場合には、Si 2p内殻、Ti 2p内殻、O 1s内殻の相互関係から電荷移動の効果が支配的であると推測できる。平成24年度は、佐賀大学シンクロトロン光応用研究センターが管轄するビームラインを利用して放射光光電子分光の実験を実施した。これまでに行った、チタン薄膜の場合と比較するため銀薄膜についても同様の考察を行った。単原子層程度のシリコン酸化膜上に銀を1-2原子層程度蒸着した場合には顕著な高酸化状態の形成は観測されなかった。このことは、銀とシリコン酸化膜との相互作用は弱く吸着位置の変化、電荷移動による電子状態の変化共にチタンの場合と比較して影響が少ないことを示している。これまでの研究において、金属蒸着されたシリコン基板に酸素を曝露すると、室温下においても数原子層の酸化膜や組成がSiO2に近い酸化膜が効率的に形成されることが指摘されている。このうち、酸化膜の厚みの評価に関しては、光子エネルギーを変化させ異なる平均自由行程での測定を行うことでより精度の高い評価ができることが確認できた。また、組成に関しては化学シフトにより見かけ上SiO2に近い組成として評価されている可能性を指摘した。この様に、金属-酸素-シリコンの三元系の電子状態や構造の評価は注意深く行う必要があることが認識できた。
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