2011 Fiscal Year Research-status Report
金属・金属酸化物高誘電体超薄膜の表面界面近傍に特異な局所価電子状態の定量的観測
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23760035
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
垣内 拓大 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (00508757)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Si(110) / coincidence spectroscopy / 高誘電体材料 / HfO2 / Auger electron / photoelectron |
Research Abstract |
本研究では、Si単結晶とその上に作製した金属および金属酸化物高誘電体超薄膜の表面・界面・基板近傍にあるSi原子を選別したオージェ電子スペクトル(AES)を測定し、他の分光法では観測できない"1層のみの表面"と"埋もれた界面"の局所価電子状態を定量的に解明する。 平成23年度は、まず、次世代LSI開発の新しい基板として期待されるSi(110)清浄面の16×2単一ドメイン作製とその表面サイトを選別した局所価電子状態の研究を行った。独自に開発した試料ホルダーを改良し、エレクトロマイグレーションを用いることによって、長周期のSi(110)-16×2単一ドメインを安定して作製できるようになった。しかし、この16×2表面構造については、正確な原子配列モデルが決まっていなかった。そこで、APECSによって、Si(110)-16×2清浄面の表面サイトを選別したSi L_(23)VV オージェ電子スペクトル測定を行った結果、Adatom-Bucklingモデルが最適であることが分かった。さらに、単一方向への原子配列を形成するadatomサイトには、フェルミ準位直下に価電子準位が局在化していることが分かった。 続いて、Si基板にHfなどの高融点金属を蒸着させるために、電子線加熱型蒸着源の設計と作製を行った。Hfなどの支持板には、高融点金属材料のTaとMoなどを用いた。Wフィラメントに2.8 A通電し発生させた熱電子を1.2 kVまで加速してターゲット試料に衝突させたが、~1,000℃以上には到達しなかった。問題を解決するため、ターゲット試料の形状、フィラメントと試料間の距離等を検討したが改善されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Hf等の高融点金属をSi基板に蒸着させることができていない。 また、東日本大震災の影響で、オージェ電子-光電子コインシデンス分光が可能なビームラインの調整が遅れ、一時実験ができなかったため、本実験を遂行するために広島大学放射光施設HiSORのBL13にて同分光法が可能な実験装置の立ち上げに時間を割いたため実験の進捗が遅れている。しかし、放射光施設Photon FactoryだけでなくHiSORでも同研究が可能となり、研究の環境の充実を図ることにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
高融点金属蒸着源の改良を行い、Hfなどの高融点金属を蒸着できるようにする。具体的には、ターゲット試料の形状を棒から箔として、熱電子を発生させるフィラメントを覆うことで電子の捕集効率を上げるようにする。 高融点金属が蒸着できなかった場合の対策として、Si(110)-16×2単一ドメインの表面構造を決めることができているので、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)原子が1層程度吸着した時の表面構造とその表面・界面・基板近傍の局所価電子状態の研究を行う。Hが吸着すると安定に16×2構造を保持することが知られているが、水素原子が吸着することによって各Siサイトの局所価電子状態がどのように変化するのかを観測した研究例はほとんどない。さらに、Si(110)面へのOやNの吸着は、Si(100)面や(111)面が非常に多く研究されているのに対して、その数が非常に少ない。さらに、Si(110)基板上に作製した1~2原子層程度の酸化シリコン(SiO_(2))や窒化シリコン(Si_(3)N_(4))超薄膜の表面・界面・基板近傍に局在するSi原子を選別して局所価電子状態を観測した例はほとんどない。Si(100)面とSi(111)面上に作製したSiO_(2)やSi_(3)N_(4)超薄膜の表面・界面・基板近傍の局所価電子状態は、その化学状態比が異なるために大きく異なっていた。そこで、Si(110)面の場合でも、これらとは大きく異なると考えられ、Si(110)面を用いた半導体デバイス開発には必要不可欠なデータが得られると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料として、金、ハフニウム箔などの購入費用を計上する。高融点金属蒸着源を改良するためにタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)材料などの購入費用を計上する。また、水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)などの気体を解離吸着させることができるガスドーザーを設計・作製するため、超高真空部品やその材料などの購入費用を計上する。 作製した試料の表面・界面・基板にあるSi原子を選別した局所価電子状態を研究するために、放射光施設Photon Factory に出張しオージェ電子-光電子コインシデンス分光によるオージェ電子スペクトル測定を行う。この際に、学部生2名程度に同行してもらうため、彼らの旅費と宿泊費を計上する。 また、本課題の開始後に得たSi(110)-16×2単一ドメインの表面サイトを選別した局所価電子状態の研究成果を発表するために"第6回分子科学討論会2012東京"の参加費と旅費宿泊費を計上する。同成果を学術誌に投稿するために、英文校閲費なども計上する。
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Research Products
(2 results)