2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属および絶縁薄膜上のジアリールエテン単一分子の光異性化の検証
Project/Area Number |
23760041
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
清水 智子 独立行政法人物質・材料研究機構, 極限計測ユニット, 主任研究員 (00462672)
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / フォトクロミック分子 / ジアリールエテン / 表面吸着 / 自己組織化 / 光異性化反応 |
Research Abstract |
分子スイッチ素子としての応用が期待されている光異性化を起こすフォトクロミック分子の中でも、異性化による長さ変化が小さく、熱的に安定で、繰り返し耐久性に優れているジアリールエテンが注目されている。すでに溶液中や単結晶では光異性化が実現されているが、デバイスへの応用を視野に入れると、固体基板上に吸着した分子物性の理解が欠かせない。そこで本研究では、金属基板および絶縁薄膜上に吸着したジアリールエテン単分子の吸着構造や電子状態、熱安定性や光反応性を明らかにすることを目的とし、走査トンネル顕微鏡(STM)と非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)の測定を単分子レベルで行った。 平成23年度と24年度では、銅Cu(111)や金Au(111)基板へ吸着させると、楕円形と二等辺三角形2種類の分子由来構造が表面上に現れ、それらが開環体と閉環体であることを実証した。さらに、金属上では熱反応が起こる、つまり熱安定性が失われ、溶液中とは反対に閉環体のほうが安定となること、さらにその原因も明らかにした。絶縁薄膜として当初使用を考えていたNaClと分子は化学反応し、閉環体が一定方向に向いて列構造をなす、これまでに報告のない自己組織化構造を作ることも判明した。最終年度では、この超構造の詳しい吸着構造を第一原理計算により確定し、分子双極子-陽イオン(ナトリウムイオン)の相互作用が原因となっていることを明らかにした。この点に関して現在論文を執筆中である。また、絶縁薄膜として、代わりにCu(100)表面上に窒化銅薄膜を形成し、そこへ分子を低温吸着させた実験も行った。STM/AFM同時測定によって、孤立閉環体分子の内部構造を可視化することには成功したが、光反応は成功しなかった。光異性化を達成するには、単に光を試料に当てるのではなく、探針による電場増強効果など、より高度な技術が必要であると考えられる。
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Research Products
(3 results)