2012 Fiscal Year Annual Research Report
二光子蛍光顕微鏡法によるフェムト秒プラズモン波束の映像化
Project/Area Number |
23760044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久保 敦 筑波大学, 数理物質系, 講師 (10500283)
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Keywords | 表面プラズモン / フェムト秒 / 時間分解 / 蛍光顕微鏡 / 微小光学 / 光物性 / 表面・界面 / 多光子励起 |
Research Abstract |
パルス幅10フェムト秒の近赤外超短パルスレーザーを励起光源に用いた時間分解二光子蛍光顕微鏡法を開発し、銀(Ag)および金(Au)薄膜上を伝搬する表面プラズモンの波束の動きを、フェムト秒の時間分解能で動的に可視化することに成功した。波束の映像データの解析から、波束の群速度、位相速度、寿命、伝搬距離、並びに伝搬に伴う波束の変形を定量的に決定する手法を確立した。多層膜における表面波の固有モード方程式解であるPockrandの式から、表面プラズモンの複素分散曲線を計算し、Ag、Au、ならびに蛍光膜材料の光学物性や厚みから予測されるプラズモン波束の群速度など動的な物理パラメーターを計算した。映像データから得た値をこれらと比較し、妥当な結果である事を確認した。これにより、当研究で開発した時間分解二光子蛍光顕微鏡法による表面プラズモン波束のダイナミクスの可視化・評価方法が、正しく機能するものである事を確認した。 さらに、電子ビームリソグラフィー法により、 Auからなるナノスケールのグレーティング構造を Au蒸着膜上に形成し、プラズモン波のブラッグミラーを製作した。ブラッグミラーでのプラズモン波の反射率を、グレーティング周期、およびプラズモン波の入射角に対し系統的に調べた。その結果から、反射率はプラズモン波長とグレーティング周期がブラッグ反射条件を満たすときに最大となり、ブラッグ条件からのずれに対し極めて鋭敏に変化するという結論を得た。 当成果は、近年世界的に研究が加速するプラズモニクスデバイスの研究において、デバイスの実用化に必要である超高速時間領域におけるプラズモン信号(プラズモン波束の列)の伝達の評価・検証を、直接「可視化」することで可能にするものである。これにより、プラズモニクスデバイスの設計や検査の精度が大幅に向上し、次世代超高速情報処理デバイスの実現に与するものと期待できる。
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