2012 Fiscal Year Research-status Report
超短パルスレーザーによる高強度THz波発生メカニズムの解明とその物性測定への応用
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23760045
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
南 康夫 横浜国立大学, 工学研究院, 研究教員 (60578368)
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Keywords | テラヘルツ / 高強度テラヘルツ / 超短パルス / 超高速分光 / テラヘルツ分光 |
Research Abstract |
近年、超短パルスレーザーの基本波と2倍波によって励起された気体プラズマから高強度THz波を発生させることが可能となった。このTHz波発生メカニズムには、プラズマ内での基本波と2倍波の光整流効果によるものと、気体分子のイオン化過程のプラズマ電流によるものの2通りが考えられていたが、申請者の研究を含むごく最近の研究により気体分子のイオン化過程のプラズマ電流によるものであることが明らかになってきた。また、申請者がこれまでに得た知見を活かし、テラヘルツ波の発生系を最適化することでテーブルトップサイズのテラヘルツ波としては世界最強電場の発生に成功した。 また、上述の高強度テラヘルツ光源を用いポンププローブ分光を行った。この分光により、THz領域における物質の運動を直接観察可能である。特に、高強度THzポンプ光の利用により、物質内原子の非調和振動の励起、ラットリングの励起といった、新たな現象の誘起と観察が可能になる。この実験により、いくつかの実験で物質において特異な応答を示すものを発見した。現在のところそれらの特異な応答の物理学解釈は得られていないが、今後の研究で明らかにする予定である。 赤外分光やラマン分光では、電子励起状態の生成や温度変化が不可避であるのに対し、高強度THz波を用いる方法では直接的なエネルギー授受を利用するためこれらの問題は起こらない。さらにこの利点を積極的に生かすことで、高強度THz波による物性制御が可能となる。例えば、「THz誘起相転移」が実現すれば、新たな物性物理学分野を開拓できる。この研究成果の波及効果は学術的のみならず工学的にも大きいものとなるであろう。今年度の研究ではその足掛かりとなる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
テーブルトップサイズのテラヘルツ波光源としては世界トップ強度である電場1.4 MV/cmのモノサイクルパルスの発生に成功した。さらに、その光源を特定の物質に照射すると特異な現象が発現することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た知見と申請者の開発した高強度テラヘルツ光源を活かし、高強度THz光による物質内の電子状態や原子状態の制御を行う予定である。特に、これまでの研究で観測された特異な現象について、実験条件の最適化を図るなど体系的に調べ、物理学的見地からそのダイナミクスを解明する。 また、これまで得られた結果を学術論文や国際会議での発表を通して成果に結びつける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(26 results)