2011 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ繰り返し超短パルスレーザーによる高次高調波発生と真空紫外光の偏光制御
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23760047
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
吉井 一倫 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 特任助教 (90582627)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高次高調波発生 / 超短パルスレーザー / 超広帯域離散スペクトル発生 |
Research Abstract |
THzに達する超光繰り返しフェムト秒パルス列を用いた高次高調波発生(HHG)は申請者の知る限りまだ例がなく,物理的基礎研究として非常に重要である.また,実用研究としても将来のHHG光源の連続光化につながる実証研究として重要であると考えられる.また,透明な固体材料が存在しない真空紫外域では,伝統的に表面反射などを利用することことにより偏光の制御や解析が行われてきた.本研究が達成されれば,コヒーレント真空紫外光の偏光制御法が初めて出現し,同コヒーレント光源の有用性は飛躍的に増大する.上記の目的に対し,今年度までに以下の研究実績を出している.1.分子からのHHGの角度分布を詳細に測定し,結果から単一分子のHHG角度分布を再構成する手法を新たに開発し,その成果をPhysical Review Letters誌106巻(2011年1月)に投稿し掲載され,また国際学会CLEO/EUROPE-EQEC 2011(2011年6月ミュンヘン)にて発表した.2.HHGに必要なレーザー強度を得るためには,THz超短fsパルスレーザーのパルス幅を圧縮しなければならない.この目的のために,レーザーの高感度スペクトル位相計測や光周波数標準に安定化された超短パルス列の搬送波位相制御を行い,国際学会・国内学会にて発表を行った.また,その成果をJournal of the Korean Physical Society誌59巻(2011年10月)に投稿・掲載され,レーザー研究誌39巻(2011年11月)に解説記事として掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は次の1,2,3を目的に研究を行った.1.超高繰り返し(THz)超短(fs)パルス列を用いた,気相原子・分子からの高次高調波発生(HHG)の実現.2.100%基底準位占有まで冷却した気相分子の断熱または非断熱配向による空間的に高度に配向した分子集団の実現.3.さらに,高配向状態分子からの高調波偏光が分子軸周りの角度に依存することを利用した,コヒーレント真空紫外光源の偏光制御手法の開発.その結果以下のような達成状況にある.1についてはHHGのためのレーザー光源として所属研究室がこれまで研究を続けてきた光周波数標準に安定化されたTHz繰り返し超短パルスレーザーの開発を引き継ぎ研究を行った.その結果,搬送波位相を高度に安定化した超高繰り返し超短パルス光を発生し成果を論文誌に発表させた.また,2,3に関しては,HHGの偏光理論の背景となる配向分子からのHHGの物理に関する基礎的な研究を行った.その結果,単一分子のHHG角度分布を分子集団からの実験結果のみから再構成できる手法の開発に成功した.その成果をまとめ,高インパクトファクターの国際誌へ投稿・掲載された.本手法は分子からのHHGの偏光特性を解析する際にも応用できる.しかしながら,実際にHHGの実証にはまだ至っていない.HHGのためには,レーザーのピーク強度を十分に大きくしなければならず,そのためにはパルス幅を十分に短く圧縮させる必要がある.研究計画当初は比較的容易にパルス圧縮を行えると考えていたが,圧縮システム開発の段階で現在所有する装置では困難であることがわかってきた.そのため今後はレーザー光源のさらなる改良が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
第一に,本年度明らかになった問題点であるピーク強度不足を解決するため,パルス圧縮装置の開発を重点的に行う.具体的には,THz繰り返し超短パルスレーザーを構成する離散スペクトルを,これまでの回転ラマン準位から振動ラマン準位を基に発生させる.これによりスペクトル幅を大幅に広げることができ,圧縮後のパルス幅を回転の場合の十分の1程度まで短くできる. 次に,発生した光のパルス幅を測定するため,スペクトル位相を測定できる位相測定装置を開発する.これはSpectral phase interferometry for direct electric-field reconstruction (SPIDER)法と呼ばれる連続スペクトル光に対する位相計測手法を離散スペクトル光用に応用したものである.回転ラマンからの離散スペクトル用にはすでに当研究室で装置開発が行われているため,今後はこの装置を振動ラマンのスペクトル用に改良を行っていく. 位相計測が行われた後は,スペクトル位相の制御を行いパルス幅を圧縮する必要がある.そのための位相制御手法と装置の開発を行う.振動ラマンからの離散スペクトルの帯域は1000THz以上と非常に広く従来の分散補償法では困難が生じるため,新たな分散補償方法を提案する.この新手法は,光を空間的に分散させることなく光軸上に数枚の透明材料を設置しその長さを制御するだけでフーリエ変換限界の超短パルス列が生成できるという手法である.すでに原理と数値実験は完了しているので,今後はこの位相制御装置の開発を行い,位相測定装置により性能を確かめる. 以上のような方針で十分なピーク強度を持つ超短パルス列発生を行った後,本来の研究目的であるHHGの実証実験を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように,次年度の主な開発装置は「位相測定装置」と「位相制御装置」の2点である.位相測定装置には広帯域用ミラーなど光学素子一式と高精度移動ステージが必要である.また,位相制御装置には透明材料として高品質のガラスや結晶,また透過距離制御用に高精度回転ステージが必要である.位相制御に用いる新たな分散補償方法は,すでに原理と数値実験結果を得ており,2012年7月にスイスで開かれる国際学会XVIIIth International Conference on Ultrafast Phenomenaでの発表が決定している.よって,本発表のための外国旅費が必要である.また,本結果の国際誌への投稿を予定しており,論文別づり費を予定している.一連の研究で得られた成果は国外・国内学会での発表を予定している.研究費の詳細は以下のように予定している.・設備備品費: 位相測定装置用移動ステージ 200,000円,位相制御装置用回転ステージ 200,000円・消耗品費:位相測定装置用光学素子一式 100,000円,位相制御装置用光学素子一式 100,000円,論文別づり 100,000円・旅費:外国旅費 成果発表 400,000円,国内旅費 成果発表 130,000円・計 1230,000円
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Research Products
(9 results)