2011 Fiscal Year Research-status Report
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23760054
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石飛 秀和 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20372633)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アゾ系ポリマー / 光異性化 / 光誘起物質移動 / 放射偏光 / 光勾配力 / 光誘起異方流動性 |
Research Abstract |
本年度は、フィルム表面に対して垂直な偏光(Ez偏光)による光誘起ポリマー移動のメカニズムの解明を目的とした。これまでの研究で、Ez偏光による光誘起ポリマー移動には、強いフィルム膜厚依存性が存在することが分かっている。具体的には、膜厚37nmを境に、膜厚が薄い場合には、スポット中心部は凹み、膜厚が厚い場合には、凸形状になる。これは相反する二つの力が作用していることを示唆しており、この二つの力のバランス関係によってポリマーの移動方向が決定されることを意味している。その力の一つとして光勾配力が考えられる。光勾配力は、双極子モーメントと電場との相互作用(ローレンツ力)であり、入射する光の波長を変化させることで、作用する力の向きを反転させることができる。これまで用いてきた波長532nmはアゾ基の吸収バンド(最大吸収波長480nm)の右肩に相当し、光勾配力によってポリマーは光強度の強い集光スポット中心部に引き寄せられる。本研究ではアゾ基の吸収バンドの左肩に相当する波長460nmを用いることで光勾配力の向きを反転させ、その状況下でフィルム膜厚依存性を調べた。その結果、光誘起ポリマー移動に波長依存性は見られなかった。この結果から、側鎖であるアゾ基に作用している光勾配力より、低波長領域(紫外領域)に吸収を有するポリマー主鎖本体に作用している光勾配力の法が支配的であることが分かった。実際、実験で用いているアゾ系ポリマーのアゾ基(側鎖)は、幾何的に主鎖であるポリマーとの結合が弱く、アゾ基に作用している力が主鎖であるポリマー本体まで伝わっていないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、集光スポット照射による光誘起ポリマー移動のメカニズムの解明を目的としており、特に光勾配力の影響を調べることを目的としている。最終目標は、近接場光マッピングへの応用であり、その意味で入射する光の波長依存性が明らかになったことの意義は大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果により、フィルム面内偏光及び垂直方向の偏光に対する光誘起ポリマー移動の膜厚依存性・波長依存性が明らかになった。これを元に実際にナノマテリアル周囲の近接場光マッピングを行う。手始めとして最もシンプルな系である単一金属ナノ粒子を用いて、プラズモン増強場(増強近接場光)分布を測定する。FDTD法による数値計算結果と比較することで、本手法の有効性を確かめる。次により複雑な系、例えば、金属ナノダイマー、トリマーの近接場光マッピングへと展開していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は主に、測定に必要な備品(ccdカメラ、偏光操作素子)に用いてきた。次年度の研究費は主にサンプルとして必要な化学薬品・金属微粒子などの消耗品に使用する予定である。また得られた研究成果の公表・発信を目的として、学会発表のための旅費に用いる予定である。
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