2011 Fiscal Year Research-status Report
コヒーレントラマン散乱イメージングのための新しいファイバー光源の開発
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23760055
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古澤 健太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40392104)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
本研究は、定量性を有するコヒーレントラマン散乱(CRS)顕微鏡において、ダイナミックなスペクトルイメージングを実現するために、近赤外波長域において3次の非線形光学効果を利用した全光ファイバ型光パラメトリック発振器(F-OPO)モジュールを実現することを目的としている。本年度は、a) 励起用のファイバ光源の開発および、b) パラメトリック発振器の要素開発を行った。以下にそれぞれの進捗をまとめる。 a) 励起光源に関しては、当初計画していたフェムト秒のシード光源が利用できないという状況が発生したため、ピコ秒モード同期パルス光源を確保し、その光を増幅することで、代替励起光源を構築した。具体的には大モード面積Yb添加光ファイバ(コア径25 um, 長さ1.7 m)を用いた増幅器モジュールを作製し増幅することで、波長1062 nmにおいてパルス幅5 ps先頭値出力(12.5 kW)を有する光パルスを発生した。このモジュールからシングルモードファイバへの結合効率は70%であり、当初必要と考えられていた非線形ファイバにおいて5 kWの先頭値出力を実現するには、結合許容損失は-2.5dBとなる。 b) 上記の結果を受け、非線形ファイバの分散特性の評価を行い、波長1060 nmにゼロ波長分散を有する非線形ファイバの選定を行った (モード径3.4 um, 非線形係数γ=15 /W/km)。この非線形ファイバとシングルモードファイバの融着の最適化を行い、1.0 dB以下の低損失な融着を実現した。従って、非線形ファイバに入射できるパルスのピーク強度は7 kWを確保できることが見積もられた。現在、長さ20 cm非線形ファイバに入射することによって、四光波混合による寄生発振的なサイドバンドが観測されている。今後、寄生発振を抑制すると共に、波長制御されたF-OPOの発振を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に用いる励起光源は、連続出力が5 Wを超える。そのため、装置の設計の上で熱的な安定性に対する工夫が重要なファクターとなり、その設計に時間を要した。また、高出力な励起光を微小なコアを有する非線形光ファイバに安定して入射させるためには、非常に低損失な融着を実現しなければならなかったこと、それにも関わらず融着装置がいつでも使用できる状態になかったことが遅れを生じている理由に挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
F-OPOを構築するにあたって、非線形光ファイバの長さを当初よりも長め(20cm)に設定し、利得を大きくして発振を容易にする工夫を行っている。この際、波長可変性は犠牲となるが、F-OPOの波長変化時の追従速度が改善される効果も期待できる。融着装置への依存度を低減するために、事前に数種類の長さを有する非線形ファイバモジュールを予め用意し、F-OPOの実験に臨むことを計画している。また、発振を確認後、ファイバ長を短くしながら、段階的に波長可変範囲を広げる予定である。喫緊の目標としては、分子の指紋領域(500~1600cm-1)をカバーできる光源が実現でき次第、顕微鏡に応用し、コヒーレントラマンイメージングへの有効性の実証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。具体的には、F-OPO共振器内の分散チューニングを行うための群遅延自動制御システム、共振器外で局発光と信号光の遅延を合わせるための光学系、及びヘテロダインCARSを実現するために音響光学変調器を購入し、高速波長可変性を活かしたイメージングの実証実験に活用する。また、イメージングを安定して行うため、光学系の自動化を工夫し、より迅速に実用的なシステムを構築するために使用する。申請者が宮城県に赴任したため、従来の装置で融着を行うためには東京へ出張する必要があり、必要であればその旅費を計上する。
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