2011 Fiscal Year Research-status Report
大面積可視メタマテリアルシートの作製と負屈折現象の実証
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23760056
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
青木 画奈 独立行政法人理化学研究所, 田中メタマテリアル研究室, 協力研究員 (90332254)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 共振器 / 磁場アセンブリ / プラズモン |
Research Abstract |
金や銀などの光照射すると表面プラズモン振動が易励起される材料でできた球や円盤をナノスケールの狭隙を隔てて円環状に配列した構造は、光波長域で磁気的共振モードを発現することが予測されており、負の値を含めた幅広い屈折率を取り得るメタマテリアルの構成要素として有望である。本研究では、そのような共振構造を、精度良く、一括して作製する技術として、常磁性体と反磁性体の外部磁場に対する磁場応答性を利用した自己組織的な共振構造作製技術の開発を進めている。金や銀は反磁性であるが、その磁化率の絶対値は極めて小さく、数十ガウス程度の弱磁場には殆ど応答しない。磁場応答性を補うために、弱磁場に十分応答する常磁性球や反磁性球に金属を被覆した微粒子を用いる方法を考案した。金を被覆した直径2micrometerの常磁性体球と直径10micrometerあるいは5micrometerの反磁性球を分散した磁性流体に磁場を印加すると、常磁性球と反磁性球中に、それぞれ外部磁場方向に平行、反平行な磁場ベクトルが生じ、平行な磁場ベクトル同士は反発し、反平行な磁場ベクトル同士は引き合う結果、反磁性球の周囲を金被覆常磁性球が取り囲んだ土星状構造を形成させることができた。土星構造の円環を形成する金被覆常磁性球同士は平行な磁場ベクトルを持つため、互いに反発し合い、その結果、等間隔に金被覆微小球が並んだ対称性の高い円環共振器構造を自発的に形成した。金被覆常磁性体球間の反発力は磁性流体、換言すると酸化鉄ナノ微粒子分散液、の濃度を調節することにより2個から6個まで制御することができた。時間領域差分法を用いた数値計算により、作製した構造は4micrometer付近に基本共鳴ピークを持ち、金被覆微小球間の狭隙に共鳴光の電場が1,800倍増強されると推測した。また、共鳴波長を4,000~500nm 間で任意に制御する為の設計指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁場アセンブリ法基盤技術の整備、共振構造の微細構造制御技術の確立、数値計算による赤外から可視域での共振器構造設計指針の確立までは、当初の計画通りに遂行した。当初の計画では、共振器構造が分散している磁性流体に光硬化性樹脂を溶解し、磁性流体ごと固化したメタマテリアルシートの透過・反射特性を紫外可視赤外分光光度計で測定する予定であった。しかし、磁性流体の構成要素である酸化鉄微粒子の光吸収・散乱の方が、共振器のプラズモン共鳴シグナル強度よりも大きいことが懸念され、共振器構造だけを選択的に固定する方法を開発する必要が生じた。今年度内にその方法を確立出来なかったため、光学特性の評価までは到達しなかった。光学特性の評価を除いては、今年度予定していた課題は解決できたので、総合的な到達度は80 %程度と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の見直しを行った結果、磁性流体中に分散する共振器構造のみを選択的に固定する技術を開発する必要が生じている。対策として、円環状共振器を構成する金被覆微粒子間の狭隙に形成される入射光の増強電場を有効に利用する方法を考案した。共振器の構成要素である微小球および光硬化性樹脂を含む磁性流体に、外部磁場を印加すると共に、通常は光硬化性樹脂の硬化反応が起こらない十分長い波長の光を照射する。外部磁場印加により共振構造が形成され、円環共振器を構成する金被覆微粒子間の挟隙で入射光電場が増強されるので、狭隙でのみ硬化反応を起こさせることが可能である。その結果、共振器構造のみを固定することができる。固定された共振器構造は遠心分離等で磁性流体と分離した後、透明媒質に改めて分散し直し、薄膜状に展開した試料全体に一括して光照射し固化することにより、フレキシブルメタマテリアルシートを形成することを計画している。 シート形成後は当初の計画通り、透過・反射特性を測定し、数値計算による予測と照らし合わせ、共振器構造、共振器密度、膜厚等の最適化を行い、可視域メタマテリアルシートを実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はメタマテリアルシート作製に着手する前の段階で、作製方法の見直しが必要になったので、シート作製装置の構成要素であるUVスポットライトとXY透過型ステージの購入は保留にした。これらの機器の購入費用を次年度に繰り越した。 再検討した研究計画では共振構造固定とシート化の課程を分離するので、磁場が印加された領域だけにUV光を照射する精密な制御は不要になり、購入を保留したUVスポット光源と透過型XYステージは入手する必要がなくなった。 研究代表者が次年度から別の研究機関に異動することになったため、本研究課題の中心となる磁場印加装置を異動先で立ち上げる必要が新たに生じている。これに今年度繰り越した予算を充当する予定である。メタマテリアルシート形成は、共振構造を分散した光硬化性樹脂薄膜全体に一括してUV光を照射する方法に変更する予定である。UV光照射とメタマテリアルシートの透過・反射特性評価に必要なフォトリソグラフィ装置と分光光度計は異動先研究室が所有しているので、次年度も本研究課題を継続して遂行することが可能である。
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Research Products
(6 results)