2011 Fiscal Year Research-status Report
Gd中性子コンバータをドーピングした半導体熱中性子検出器
Project/Area Number |
23760065
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三宅 亜紀 静岡大学, 電子工学研究所, 学術研究員 (60441606)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 中性子検出器 / 半導体検出器 / CdTe |
Research Abstract |
中性子コンバータをドーピングした半導体中性子検出器の作製を目指し、本研究ではCdTeへのガドリニウム(Gd)ドーピングを提案した。CdTeへのGdドーピングはCdTe基板上にGd薄膜を形成し、これをレーザ打ち込みによって基板内部に拡散させてドーピングを行う。そこでまずは抵抗加熱法によるGd薄膜作製を試みた。Gdはこれまで成膜を行なってきたInなどの蒸着材料と比較して融点が高いため、装置の改造が必要であった。高融点材料に対応する装置改造と同時に、従来の材料を蒸着する場合にGdが混入することを避けるための装置改造も行った。装置改造後、GdのCdTe基板上への膜形成を試みたが、成膜後にGd膜が剥離するという問題が発生した。蒸着試料と基板間の距離など成膜パラメータを検討したが改善は見られず、安定したGd膜を得ることができなかった。また、Gd成膜中にCdTe基板が輻射熱によって高温にさらされることが温度測定により明らかになり、熱によるCdTe基板の特性への影響が懸念された。これらのことから、Gd膜の成膜については外部委託を検討した。現在、より安定した薄膜形成が可能と思われるスパッタ法もしくはイオンプレーティング法による成膜を検討中である。上記の実験に並行して、将来的な結晶成長でのGdドーピングを視野に入れ、Gd層のCdTe基板の表面からの深さにおける検出効率への影響を検討した。Gd層を基板表面に配置する場合と、基板の中心付近に配置する場合の二種類の条件で計算による検出効率の比較を行った。その結果、表面にGd層がある場合のほうがGd層が中心部分にある場合よりも中性子の検出効率が高いということが示された。これはCdTeを構成するCdによる中性子吸収の影響が大きいためであり、今後のドーピングを行った場合においても、ドーパントの位置により検出効率に影響があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画ではCdTe基板にGdをドーピングするため、Gd膜の抵抗加熱による蒸着を予定していた。しかし、成膜用の抵抗加熱装置が設備の故障により使用出来ず、Gd成膜の予定が約三ヶ月遅れた。その間に装置改造やGd膜の検討などを行ったが、Gd膜が成膜できなければ進められない検討も多く、遅れが発生した。さらに抵抗加熱装置で成膜したGd膜が成膜後に剥離するという問題が発生し、基板と蒸着源の距離などを検討してみたが改善があまり見られなかったことから、Gdドーピングの検討に移ることができなかった。そこで、抵抗加熱よりも密着性の高い膜が得られると期待できるスパッタ法もしくはイオンプレーティング法による成膜を外部発注により検討している。上記理由でドーピングに関する実験が遅れたため、次年度に予定していた将来的な結晶成長でのドーピングに関する検討を前倒しして行った。
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Strategy for Future Research Activity |
【Gdドーピング】CdTe基板へのGdドーピングには、まずCdTe基板上に安定したGd薄膜を形成する必要がある。抵抗加熱法によるGd膜形成では、蒸着膜がCdTe基板から剥離して安定したGd膜を得ることができなかったので、外部委託により、密着性の高い手法を用いてCdTe基板上へのGd薄膜の形成を行う。Gd膜を外部委託することで、予定していたGd膜の成膜に関する評価項目を省き、ドーピング条件の検討に注力することができる。Gdドーピングは本研究において重要なパラメータであり、安定したGd膜が得られることは、再現性の高く、ドーピング条件の比較結果の妥当性も得られると期待できる。CdTe基板上に形成したGd膜はレーザーによる打ち込みでドーピングを行う。条件の異なるサンプルを作製し、ドーピングの中性子検出への影響評価を行うために、ドーピング層の物性評価と実際に素子を作製して特性評価を行う。特に中性子検出特性に影響の大きいγ線検出器としての特性評価を優先して行う。評価項目としては大学の装置を利用して行うことができる素子特性評価(I-V特性など)と物性評価(XRDなど)を中心に行う予定である。また、他の基板に対するドーピングも検討する予定であるが、CdTe基板を優先する。【素子化及び中性子検出評価】最終的にGdドーピングしたCdTe中性子検出器の作製を目指し、実際の素子化とその性能評価を行うと同時に、将来的な結晶成長によるドーピングを考えて、Gdの素子内での存在場所による影響を検討するために、Gd箔とCdTe検出器を用いて作製した素子による評価を行う。中性子検出測定のために予定していた加速器中性子ビーム源の使用は、先の震災の影響で困難であると予想されるため、名古屋大学での中性子源を用いての評価を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度から繰り越す90万はGd薄膜の形成に一回30万円程かかるため、3回として計上する。さらにGd成膜の作製と評価に充てる予定であった予算、予定していた旅費の予算の一部をGd薄膜の形成に充てる。これは、安定したGd膜を用いることにより、本研究で重要となるGdドーピング条件の検討をより詳細に行うためである。これにより、ドーピング条件をより多く検討することができ、最終的な中性子検出器への応用に対しての基礎データ及びコンバータドーピングに対する知見を得ることができる。旅費は、国内発表と測定のための出張旅費とする。その他の資料収集などは申請書通りに使用する。
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