2012 Fiscal Year Annual Research Report
エージェント集団行動の大規模同期現象のモデルと推計
Project/Area Number |
23760074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 彰洋 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50335204)
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Keywords | 大規模同期現象 / 外国為替市場 / 極値分布 / 時系列分断 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究では2007年6月から2012年11月(66カ月)までの1秒解像度のインターバンク市場での通貨注文と取引に関するデータ約5億4千万レコードを収集しネットワーク複雑性に基づく同期行動の指標をデータから計算することで外国買為替市場でトレーダーが行う通貨注文と通貨取引の大規模同期現象を調べた。H23年度に能力増強を行った64コアクラスタ型並列計算機を用いてデータの並列計算を行った。単位リンク当たりのネットワークエントロピーに基づくネットワークの集中度定量化指標を開発し1分ごとでの注文と取引の様子をデータ全期間にわたり計算した。期間内1週間ごとでの注文や取引の観点からは特に市場全体での注文総数および取引総数が増加しているわけではないが、1分解像度でネットワークをとらえた場合に注文と取引が市場全体で集中して発生する大規模同期現象を観測期間中でとらえることに成功した。この大規模同期現象は外国為替取引の注文に関しては2012年2月に、取引に関しては2011年12月から2012年2月にかけて繰り返し起こっていたことを発見した。1分当たりの注文と取引に関して計算される単位リンク当たりのネットワークエントロピー値の生起確率の外挿を極値分布の有限混合モデルに基づく最尤法を用いたパラメータ推定方法と情報量基準差を用いた時系列分割方法を用いて行った。観測期間の5年間に一度の確率で発生する今回確認された大規模同期現象よりも大きな同期現象の規模を外挿した確率分布関数を用いて見積もることに成功した。外挿確率分布と単位リンク当たりのネットワークエントロピーとの計算値との間でKolmogorov-Smirnov検定を行いデータが推定分布からの抽出であるという仮説は10パーセントの有意水準で棄却されないことを確認した。
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