2011 Fiscal Year Research-status Report
固体高分子形燃料電池の新型触媒における性能の評価を目的とした数値解析
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23760076
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
立川 雄也 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 特任助教 (70587857)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 固体高分子形燃料電池 / 新規触媒開発 / 高性能化 / 触媒構造 / 運転条件 / 水管理問題 |
Research Abstract |
固体高分子形燃料電池の性能向上に向けて,耐久性の向上が非常に重要であり触媒の構造や物性の制御により,性能と耐久性に優れた触媒を主に数値解析の立場から研究を進めている.燃料電池の数値解析モデルを構築し,酸化スズ触媒担体などのセルで実測した物性値による計算を行った結果,特にアノード側の触媒に白金を担持した酸化物系触媒担体を使用することが高分子膜を含めた水保持特性の向上に有効であると判明した.昨年度の関連学会における情報収集において2015年の燃料電池自動車実用化に向けて耐久性向上が最も重要であり,その中でも高分子膜の水分量の変化による膨潤/乾燥が耐久性低下に大きく影響するとされていることからも,本研究で明らかにしたような高分子膜の水分保持特性を向上させる研究の意義は大きいと考えられる.またカソード触媒に関しても酸化スズ触媒担体と酸化チタン触媒担体に関して表面特性と電気化学特性について計測値を得ることができたが,カーボンナノチューブ担体などの特殊な構造を有する触媒担体に関しては実験ができなかったため,特性の情報収集のみを行った.カーボン系触媒担体に関しては酸素(OH基中のOも含む)との反応により構造変化が避けられない可能性が高いことが以前の学会でも指摘されており,最近の情報収集においてもカーボン系触媒担体の変形が高性能電子顕微鏡で捉えられるなど変形挙動が明らかになったことから,酸化物系触媒担体の重要性と開発意義が更に高まったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体高分子形燃料電池の性能改善に向けた研究の平成23年度の進捗について数値解析による触媒評価と実際の触媒調製による性能改善に向けた試験のそれぞれについて達成度を検証した場合に数値解析側の評価では耐久性向上に向けて空隙率などの構造特性値を調整したアノード側触媒担体に酸化スズを使用するPt/SnO2触媒を用いることが良好な性能を導くことが示唆されるなど順調な進展をしていると考えられる.新規高性能触媒の調製に関しては実際に酸化物系触媒担体(Pt/SnO2)を調製し,性能の評価を行っていることや,触媒の改善に向けて実験を順調に進めている.しかし研究目的の達成に向けたカーボンナノチューブなどの炭素系触媒担体や窒化物系の触媒担体の調製に関して,カーボンの耐腐食性に関する問題や窒化物の調製が困難となった関係から当初の予定とは異なり,それらに関して触媒調製は進めないこととした.そのため実験からのアプローチの種類は当初より減ることとなったが,当初より酸化物系の実験・計測に対し比重を置いて研究を進めることが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として数値解析側では調製を行った酸化物系触媒の構造をCADデータとして変換し,それらの構造・表面などの各種パラメータを反映させて計算を行う.特に複雑形状中の流体解析に有効な格子ボルツマン法で熱・流体・電気化学反応を数値解析により計算し,その結果を触媒調製に反映させることで内部現象の可視化と現象の把握により,より構造的に優れた触媒開発に向けて研究を推進する.触媒調製による実験・計測では当初予定していたスズ酸化物とチタン酸化物の触媒担体の高分解能電子顕微鏡により観察し,より優れた触媒の構造を検証すると共に,数値解析側で得られたアノード低加湿雰囲気における酸化物系触媒担体の性能評価を継続して行うことで実験と計算の合致点・相違点の知見を収集し,改善に向けて実験・計算の両面からアプローチを進める.これらのアプローチにより,反応性に優れた高性能触媒の開発に向けた学術的知見の収集を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用計画として,1)計画変更箇所,2)次年度に使用する予定の研究費がある場合に関する説明,3)それらを考慮した使用計画の順で述べる.まず計画変更箇所であるが,当初予定していた計算機利用費(九州大学高性能大型電子計算機)の利用を,無償で他の高性能計算機を使用することが可能となったため計上しないこととした.また次年度の8-9月に短期的な海外研修を行うこととなったため10月の国際学会(アメリカ)を7月に開催される国際学会(ブラジル)へ変更した.次に次年度に繰り越した研究費についてであるが,印刷費について次年度4月の英文論文寄稿・審査費用として利用予定である.大型電子計算機利用費が変更となった件は前述の通り,無償の計算機を利用することとなったためである.また当初予定していた旅費が使用されていない件は予定していた国内外の学会が他経費の業務として執行,計上されたためである.最後に次年度の研究費使用計画であるが,当初予定していた計算機利用費と未使用分について,計算機利用費分を触媒材料費・計測装置費用および印刷費として加算すると共に,旅費未使用分を,参加する国際学会の変更に伴う旅費の増額分補填,当初の計画で計上していなかった国内学会の参加費・旅費として計上する.
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