2012 Fiscal Year Annual Research Report
高次骨機能診断を目指したX線回折による有機・無機複合ナノ構造の力学解析法
Project/Area Number |
23760080
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東藤 正浩 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314402)
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 生物・生体工学 / 放射線,X線,粒子線 / 老化 / 骨組織 |
Research Abstract |
これまで骨の強度低下は骨粗鬆症に見られるような,骨量の減少による巨視的な骨密度の低下を主な原因と仮定されてきたが,近年,骨強度に関連する因子として骨量の他に,その骨質が影響していると指摘されている.そのためより精度の高い骨強度評価のためには骨量と骨質の両者を考慮した診断手法が望まれるが,そのような骨診断方法は未だ実現されていない.そこで平成24年度については,以下の研究を遂行した. 物質に単一波長の励起レーザーを照射すると,入射光と同じ振動数の散乱光(レイリー散乱)と,異なる振動数の散乱光(ラマン散乱)が生じる.物質の特性に応じてラマン散乱の振動数すなわちエネルギーが変化することから,ラマン分光法により骨組織内の有機および無機両成分を同時に測定できる.本研究ではラマン分光法により骨の無機・有機成分の力学応答を観察した.試験片としてウシ大腿骨骨幹部皮質骨を用いた.引張負荷治具によって負荷した状態で,骨組織の顕微ラマン分光測定を行った.得られた骨のスペクトルからアパタイトおよびコラーゲン由来のラマンシフトを解析した.その結果,引張負荷によってアパタイトおよびコラーゲンのラマンシフトは線形的に減少した.また,その傾向は,骨の力学的異方性や加齢度によって異なった.以上の結果から,ラマン分光法は骨組織の無機相と有機相の負荷応答が測定可能であり,骨組織のラマン応答は異方性と加齢に依存することが確認できた.これらのことから,骨組織のアパタイト/コラーゲン構造に基づく骨強度評価のための新しい骨診断手法として,ラマン分光法による力学解析手法を提案することができた.
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