2011 Fiscal Year Research-status Report
GPUアクセラレートされたPhase-Field法に基づく複合組織鋼の材質予測
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23760088
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山中 晃徳 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (50542198)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Phase-Field法 / GPU / 材質予測 / 鉄鋼材料 / マルチスケールモデル |
Research Abstract |
本研究では, Phase-Field法を用いて鉄鋼材料中の複相組織の形態や各相の空間分布, 残留応力分布を予測するとともに, その予測結果を基に鉄鋼材料の力学特性を定量的に評価可能な組織・特性評価シミュレーション法を確立することを目的としている. また, Graphics Processing Unit (GPU)による超多スレッド数値計算法を用いて上記シミュレーションの高速化, 強連成解析を可能とすることで, 相変態を伴う鉄鋼材料の塑性加工シミュレーションを実現する. 本年度においては、ほぼ当初の研究計画通りに、熱間加工されたオーステナイト相におけるフェライト変態挙動を予測するための結晶塑性有限要素法とMulti-Phase-Field法を用いたマルチスケールモデルを構築した。本モデルを用いることで、オーステナイト相への加工がフェライト粒径に及ぼす影響を明らかにできるなど、鉄鋼材料の高機能化につながる有益な知見が得られた。 また、構築したマルチスケールモデルにおいて、フェライト変態のMulti-Phase-Fieldシミュレーションを効率的に行うために、GPUによる高速計算手法を確立し、従来のCPUによる計算の15倍の高速化を達成することができた。これにより、来年度以降のMulti-Phase-Field法を用いた複相組織形成の3次元シミュレーションが可能となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にて提示した通り、結晶塑性有限要素法とMulti-Phase-Field法を用いた加工オーステナイト相におけるフェライト変態シミュレーションモデルの構築、およびGPUによる高速計算手法の確立は達成され、鉄鋼材料の高機能化につながる有益な知見が得られた。また、GPUを用いたMulti-Phase-Field法の高速化については、大きな進展が得られ、従来のCPUを用いた計算に比べて、飛躍的に効率的なシミュレーションが可能となった。 しかしながら、鉄鋼材料の連続冷却工程におけるフェライト変態以降の相変態(たとえば、パーライト変態やマルテンサイト変態)を予測し、実用鋼の複相組織を予測するPhase-Fieldモデルの構築については、現在研究を行っているところであるが、GPUによる高速計算法が確立したことにより、本研究は今後一気に推進できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、実用鋼の複相組織の形成過程を予測するためのPhase-Fieldモデルの構築を推進する。これにおいては、既に構築済みの結晶塑性Phase-Fieldモデルなどの応用も視野にいれ、従来にないPhase-Fieldモデルの構築を行う予定である。 また、今年度にGPUによるMulti-Phase-Fieldシミュレーションの高速化法が確立されたため、平成24年度は研究申請時の計画通り、Phase-Field法で予測される鉄鋼材料中のミクロ組織形態に基づく数値材料試験を行うための均質化有限要素解析法の開発を行う。さらに、上記研究を発展応用させて、加工誘起変態や変態塑性現象の解明につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、Multi-Phase-Fieldシミュレーションの高速計算を可能とするため2GPUを搭載したGPUクラスターを購入し、それを用いてフェライト変態のMulti-Phase-Fieldシミュレーションを従来のCPUを用いた計算の15倍の高速化を達成した。平成24年度においては、本年度に構築したMulti-Phase-Fieldモデルを用いた3次元シミュレーションを可能とし、より定量的な組織形成シミュレーションを可能とするべく、さらにGPUクラスターを2ノード追加し、複数GPUによる高速計算を可能とする。この理由としては、現在のGPUではメモリが十分でなく、シミュレーションで得られた組織形態と実験との定量的な比較を行うためには、計算領域の拡大が重要であるためである。 また、得られた研究成果は、国内講演会や国際会議等で発表し、世界に広く発信するべく、それに必要な旅費や登録費に研究費を使用する予定である。また、GPUで高速化されたPhase-Field法による材質予測は、本研究で世界に先駆けて行っている研究であり、今後も国内外の学術雑誌への投稿が期待できる。したがって、そのための論文投稿費用や実験に用いる試験片購入費、実験設備利用費も使用する予定である。
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