2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞・実空間スケールを統合した脳外傷バイオメカニクスの実験的研究
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23760093
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 祐介 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (70432135)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生体力学 / 傷害予防 |
Research Abstract |
交通事故等の各種事故において頻度・重症度から脳外傷の予防が重要であるが,その評価は既存の頭部傷害基準では困難である.脳外傷を評価可能な傷害基準を制定するためには,(a)製品評価用ダミーで計測可能な頭部の剛体運動,(b)脳実質変形,(c)細胞スケール損傷までの空間的にスケールが異なる関係をシームレスに解明することが必要である.そこで本研究では実人体と形状・材料特性が等価な培養細胞接着脳物理モデルに対して,実事故レベルの外力を与えることにより,頭蓋骨の剛体運動スケールから脳深部の細胞変形スケールに至る脳外傷メカニズムを実験的にシームレスに解明することを目標としている.本年度は,(a)頭部の剛体運動と(b)脳実質変形の関係について超精密頭部実体モデルの構築とその衝撃実験を実施し,頭蓋骨の剛体運動と脳深部変形挙動の関係を明らかにした.特に側方衝突を模擬した衝撃条件下において,脳深部変形挙動のメカニズムとして,頭蓋骨‐脳間の相対回転にともなう,左右大脳の逆向き回転による脳深部せん断変形が重要であることを明らかにした.加えて,(b)脳実質変形と(c)細胞スケール損傷の関係を解明するために,培養神経細胞としてPC12細胞をシリコンゲル状に培養した神経細胞培養脳実体モデルを構築し,本モデルに対して回転衝撃を与えた.本実験において,脳実質モデルのひずみ分布をデジタル画像相関法により実施するとともに,神経細胞の形態変化観察を光学顕微鏡により実施した.その結果,せん断変形による神経突起の断裂・退縮・膨張を確認するとともに,最大せん断ひずみの増加および衝撃付加後の時間経過によって神経突起の損傷率が上昇することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書記載の培養神経細胞脳モデルの構築も行えており,初年度に予定していた衝撃実験装置の構築とそれによる脳変形挙動計測と神経細胞の形態変化の観察も実施できているからである.加えて,超精密頭部実体モデルにより頭部剛体運動と脳実質変形の関係を可視化することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は前年度に構築した培養神経細胞による衝撃実験系により,衝撃実験の回数を大幅に増加させ,脳実質ひずみと神経細胞レベル損傷との関係を明らかにする.特にひずみ,ひずみ速度レベルに関する実験条件をコントロールし,脳実質ひずみと神経細胞損傷率との関係を明らかにする.また,有限要素モデルによるシミュレーションによりひずみ計測領域内のマクロなひずみ分布と,神経細胞周辺の局所領域のひずみ集中との関係について検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は衝撃実験を多数実施するためにピペット,シャーレ等の消耗品の消費が多くなると予想される.また,脳実質モデル構築用消耗品も同様の理由で消費が大きい.したがって消耗品費が大半を占めるため,これに500千円を計上した.加えて,国内学会発表の旅費として2回分の100千円,論文投稿時の校閲料を100千円計上した.
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Research Products
(4 results)