2011 Fiscal Year Research-status Report
構造材料の応力腐食割れ機構の解明と合理的寿命評価指針の確立
Project/Area Number |
23760095
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤井 朋之 静岡大学, 工学部, 助教 (30377840)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 応力腐食割れ / 破壊力学 / ステンレス鋼 / 塑性変形 / 大規模降伏条件 / き裂進展速度 |
Research Abstract |
応力腐食割れ(Stress corrosion cracking, SCC)は,材料,環境,応力の組合せにより生じる極めて複雑な破壊現象である.従来,SCC進展特性に及ぼす応力条件は,線形破壊力学に基づき評価が行われているが, SCCは溶接や機械加工によって誘発される降伏応力程度の引張残留応力に起因して発生・進展することが報告されておりため, SCCは塑性変形場において,発生・進展する.従って,従来の線形破壊力学パラメータに基づいた評価では十分ではなく,高精度なSCC進展挙動評価には塑性変形を考慮することが必須である.そこで本年度は,非線形破壊力学パラメータJ積分に基づいて,大規模降伏条件下や塑性変形場において発生・進展するSCCの進展速度を評価した.小規模および大規模降伏条件におけるSCC進展評価にはコンパクト引張試験(CT試験),鋭敏化処理を行ったオーステナイト系ステンレス鋼SUS304を用い,腐食環境において塑性変形場におけるSCC発生・進展評価には,四点曲げ試験を実施した.両試験においてき裂進展速度を測定するとともに応力拡大係数およびJ積分を求め,異なる力学条件におけるき裂進展速度と破壊力学パラメータの関係を比較・検討を行った.実験の結果,応力拡大係数に基づいたき裂進展速度の評価では,4点曲げ試験の結果とCT試験結果は大きく異なっている.J積分による評価では,その差は小さくなりJ積分による評価の方が有効であることがわかった.従って,小規模および大規模降伏条件,塑性変形場に進展するSCCは,J積分により統一的に評価できる可能性が示唆された.本結果は,原子炉炉内構造物や化学プラントにおける構造部材の高精度な余寿命評価に応用できると期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,破壊力学試験片と四点曲げ試験片におけるSCC発生・進展試験を行い,SCC進展速度はJ積分で統一的に評価できる可能性が示唆された.なお,SCC進展速度はばらつきが非常に大きいため,信頼性向上のため試験片本数を増やし,結果の妥当性の検証を行う必要がある.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施した,SCC進展試験を引き続き行い,結果の妥当性の検証を実施する.次いで,SCC発生・進展挙動の結晶学的解析を行うため,EBSD法による結晶構造解析を実施した試験片において,SCC発生・進展挙動の評価を行い,SCCの発生・進展した場所の特定を行う.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
結晶方位測定による粒界に着目したSCC発生挙動の解明を行うため,試験片等の消耗品と設備(FE-SEM, EBSD)利用費を計上する.また,粒界を特徴づけるパラメータとして粒界エネルギーに着目し,分子動力学計算を実施するため,ワークステーションの購入経費を計上している.実構造物のSCCの状況,SCC試験の調査研究,研究成果発表のため,代表者と大学院生の国内旅費,外国旅費を計上している.
|
Research Products
(2 results)