2011 Fiscal Year Research-status Report
多孔質材料のマルチスケール確率応力解析および信頼性設計法に関する研究
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23760097
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
坂田 誠一郎 島根大学, 総合理工学部, 准教授 (80325042)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 確率均質化 / マルチスケール確率応力解析 / 多孔質材料 / 光造形法 / 信頼性設計 |
Research Abstract |
本年度は,研究計画に則り,(1)多孔質材料のマルチスケール確率応力解析手法(空孔が二次元一様分布する場合)の開発,(2)モンテカルロシミュレーションによる多孔質材料のミクロ応力確率特性評価及び(3)光造形装置による二次元多孔質材料試験片の試作及び実験を行った.具体的には,(1)については申請者らが開発を行ってきた摂動法に基づく手法により確率応力解析を実施し,(2)のモンテカルロシミュレーションにより得られた結果と比較した.この結果により,提案手法による多孔質材料のマルチスケール確率応力解析の実施可能性が明らかとなった.本検討の意義は,低コストなマルチスケール確率応力解析手法の有効性を明らかにしたことであり,今後より一般的な問題に対する手法開発における基礎的なデータとして極めて重要である.さらに,(3)のために,既存の設備により作製した二次元多孔質材料のポストキュア環境を整備し,孔のない試験片及び多孔質試験片を作製して微小荷重引張り試験機により引張り試験を実施することで,使用した材料そのものの弾性特性および作製した二次元多孔質材料の空孔のばらつき特性と等価弾性特性を調査した.これにより得られた結果は,多孔質材料における素材の弾性定数およびミクロな空孔形状のばらつきと等価弾性定数のばらつきの関係を実験的に与えるものであり,本研究で対象としているマルチスケール確率応力解析に用いる確率均質化解析手法による結果と実験結果の対応を検証する上で極めて重要なデータである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,(1)申請者等がこれまでに開発した手法による多孔質材料の確率均質化解析の実行と妥当性確認,(2)二次元的な空孔分布を有する多孔質材料(二次元多孔質材料)への適用を想定したマルチスケール確率応力解析法の開発,(3)提案手法による二次元多孔質材料の巨視的弾性特性,強度特性及びそれらの確率特性解析の実行,(4)モンテカルロシミュレーションに利用可能な多孔質モデルの生成とシミュレーションの実行,(5)(2)~(4)の比較による提案手法の妥当性検証,(6)高精度化した光造形装置による二次元多孔質材料の造形及び試験片の製作,(7)(6)により作成した試験片による二次元多孔質材料の材料特性評価試験の実行,の計7項目の実施を予定していた.これらの項目のうち,(1)~(5)については計画通り手法開発が完了し,数値計算も実施した.さらに,一部ではH24年度に実施する予定の内容の基礎的な検討にも着手できた.従って,数値シミュレーションの部分については順調であると考える.一方,実験的検証の部分については,(6)については,ポストキュア環境などの整備を実施し,試験片作製を実施したなどおよそ予定通り進捗したものの,(7)については,装置の不具合等もあり,十分な数の試験片が作製できなかったため,当初目標としていた材料の破壊荷重のばらつきの測定までは至らず,等価弾性特性およびそのばらつきの測定にとどまった.得られた結果により等価弾性特性に関する確率均質化解析と実験結果との比較は可能となったが,さらに試験を実施し,マルチスケール確率応力解析結果と実験による破断荷重のばらつきの比較までを行う必要があるため,概ね順調に進んでいるとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について,まずはH23年度に十分作製できなかった二次元多孔質材料試験片を作製し,等価弾性特性にとどまらず破断荷重のばらつきの測定までを行いたい.その上で,本研究により開発しているマルチスケール確率応力解析手法による結果と比較し,改良すべき問題点について検討を行いたい.現在の予想では,これまで報告した確率均質化問題と比較し,マルチスケール確率応力解析による結果と実験結果では十分な一致度は期待できないと考える.この理由の一つは,均質化が平均化であるのに対し応力解析では最弱箇所の状態を考慮する必要があることから,微視的物理量の非一様性の影響が大きく現れると予想されるためである.このことから,当初計画通り,解析手法に関しては本年度は提案手法を非一様空孔分布を考慮した場合への拡張を試みる.これにより,実験結果により近い結果が得られるか否かについて検討する予定である.また,最終目標として三次元空孔分布を有する多孔質材料を考えていることから,本年度より数値解析と実験の両方について三次元多孔質材料への拡張を開始する.数値解析の面では開発したシステムは三次元問題にも対応しているので,問題設定等を検討し数値計算を実施する.一方,実験的には,現在所有する光造形装置では三次元多孔質材料の作製が困難なため,新たな作成法の適用により三次元多孔質材料の作製を試みる予定である.以上をまとめると,今後の研究推進方策は,当初計画通り(1)三次元多孔質材料への拡張,(2)非一様空孔分布の考慮を実施し,H25年度以降の応用的な解析および信頼性設計へと展開したいと考える.さらに,当初計画には無かったが,多孔質材料の熱的環境下での使用を鑑み,熱応力問題も考慮した手法の開発へとつなげたいと考える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定では,次年度は研究成果報告のための旅費及び試験片作製のための消耗品の購入を研究費使用計画としていた.しかしながら,H24年度より申請者の異動により所属が変更になったことなどの理由から,解析システム等の整備が若干必要になっている.また,現存設備である光造形装置に使用している赤外線レーザーユニットが寿命となる可能性もあり,この場合は試験片作製継続のためレーザーユニットを購入する必要も生じると予想されている.一方樹脂については昨年度に一度の造形で使用する量を低減できるよう造形法を改良したため,追加購入が少なくて済む予定である.係る理由から,次年度の研究費については,継続的な研究の遂行を可能とする程度の環境整備を優先して研究費を使用し,一方で研究成果を効率的な公表するよう研究費使用を行う予定である.
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