2011 Fiscal Year Research-status Report
極低温液体タンク用繊維強化プラスチックのキャビテーションによる損傷の研究
Project/Area Number |
23760104
|
Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
熊谷 進 仙台高等専門学校, マテリアル環境工学科, 准教授 (30390389)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 損傷 / キャビテーション / 繊維強化プラスチック / 高圧タンク / 液化タンク |
Research Abstract |
ガラス繊維強化プラスチックを対象に、開発したキャビテーション負荷装置でキャビテーションを繰り返し発生させ、試験片表面の観察および超音波探傷による内部損傷評価および層間せん断強さ評価を実施して、以下の成果を得た。1.レーザ顕微鏡による試験片表面の微視き裂測定では負荷回数増加に伴い微視き裂深さは全体を通して増大する傾向にあるが一部で深さが減少する傾向も示された。キャビテーション負荷回数増加に伴ってき裂が深くなる段階と試験片表面が壊食する段階があると推察され、次年度走査電子顕微鏡を用いてキャビテーション負荷回数増加に伴う試験片表面の変化観察に着手する。2.JIS K 7057(ISO14130)に準拠した見掛けの層間せん断強さはばらつきを示すことが明らかになった。負荷を与えていない試験片の個体差によるばらつきが1 MPa以下なのに対して負荷を与えた試験片のばらつきは約5 MPaになることもあり、タンク内の加減圧によるキャビテーションによって強さに変化が起こることが明らかになった。3.荷重変位曲線直線部分の傾きを5%減じた直線と荷重変位曲線が交差する点で定義した5%オフセット荷重による層間せん断強さ評価において、キャビテーション負荷回数の増加に伴い強さは増加と低下を繰り返しながら全体として減少傾向にあった。この傾向と負荷回数増加に伴うき裂深さの増加傾向はよく一致しており、負荷回数に伴うき裂の深さ変化について今後詳細な検討を行っていくことがキャビテーションによる強度低下のメカニズムの解明につながると考えている。4.超音波探傷器によるキャビテーションによる損傷の検出に関して、浸漬方式を採用して各種センサーによる検出の試行を行い、損傷の定量的な測定について興味ある結果を得つつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画した研究に関しては予定通り実施でき、タンク内圧の変化によって生じるキャビテーションによる(炭素・ガラス)繊維強化プラスチックの損傷機構を明らかにしつつあり、超音波探傷器による損傷評価も一部成果を得ており、キャビテーションによる損傷の定量的評価法の確立に向けて見通しは明るい。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時に予定していた計画に加えて、本年度の結果を受けて、次の点についても詳細に検討を行う。1.キャビテーション負荷回数増加に伴う試験片表面の変化について走査型電子顕微鏡を用いて観察を行い、き裂の進展段階と試験片表面壊食段階の関係を明らかにする。2.キャビテーション発生において、発生する直前に負圧になり、発生後局所的に急激に高圧となることが知られている。本研究において行っているキャビテーション試験においても局所的にどのような圧力変化が起きているのか理論的実験的検討を行う。実験では研究協力者の助言を得て、冷媒ガスおよび液体窒素を対象としてベルセロ法を用いて繊維強化プラスチック表面の圧力変化を測定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の申請当初に購入を計画していたフェイズドアレイ搭載の超音波探傷器をフェイズドアレイ機能を後から追加できる別メーカーの超音波探傷器に変更・購入した。研究を遂行していく中で、フィズドアレイ機能を用いず通常の探傷走査の方が最適であることがわかり、上記機能を追加することを中止したため23年度の未使用額が発生した。そこで、本研究23年度申請時に予定していた液体ヘリウムおよび有限要素解析ソフトの他、上記推進方策で述べたベルセロ法による測定のための試験片表面の圧力変化を測定するための圧力変換器を用いた装置の開発に用いる。
|