2011 Fiscal Year Research-status Report
ホットスタンプにおける成形限界予測のためのシミュレーション援用材料試験法の開発
Project/Area Number |
23760115
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
濱崎 洋 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30437579)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高温成形 / 大ひずみ / 材料パラメータ同定 |
Research Abstract |
平成23年度は980MPa級熱間圧延鋼板の高温引張試験により,試験温度が室温から800℃,ひずみ速度が0.001,0.01および0.1毎秒での応力-ひずみ曲線を取得した.その結果,温度が上昇するほど,またひずみ速度が低下するほど流動応力が減少する顕著な温度・速度依存性が観察された.また,高温成形時のスプリングバック量を調査するためVおよびU曲げ試験を実施した.ただし温度の影響を調べるために電気炉内に金型を入れて等温状態で試験を実施している.試験条件は試験温度が室温から650℃まで,パンチ速度が0.02および10mm毎秒とした.パンチ速度10mm毎秒のV曲げ試験結果では300℃から650℃までは温度の上昇に伴いスプリングバック量が減少したが,いずれも室温と同等か室温よりも大きなスプリングバック変形を生じた.この理由として,高温では流動応力の減少により残留応力が低下するが,同時に高温になるにつれてヤング率が低下してスプリングバック量が常温と比べてほとんど変化しなかったと考えられる.一方U曲げ試験ではいずれの速度でも温度が上昇するにつれてスプリングバック量が減少し,その量は室温よりも小さくなった.以上の結果を考察するため,V曲げ成形後に金型内で5秒間保持した後に除荷を行ったところ,高温域では保持無しの場合に比べスプリングバック後の角度が大幅に減少した.その時の時間-荷重曲線では保持中にリラクゼーションが起こりパンチ荷重が大きく低下していることを確認した.すなわち高温変形では成形終了時の保持中に応力緩和が起こり,結果として残留応力が低減したと考えられる.またU曲げ試験ではV曲げ試験に比べ板材が金型内部に入り込む時間が長く,自然と応力緩和が起こったために成形温度の上昇とともにスプリングバック量が低下したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は材料の室温から650℃までの高温単軸引張試験を実施し,材料の基礎特性である応力-ひずみ曲線の取得とその温度およびひずみ速度依存性を把握することができた.本研究では引張試験で得られるひずみ以上での加工硬化特性を実験と数値シミュレーションを併用することで求めることを目的としており,そのためにはまずは単軸引張試験結果を高精度に再現できる材料モデルの構築が必要となる.本試験結果により高温変形特性を取得することができたため,今後は温度と速度を考慮した材料モデル開発に着手し,それを有限要素法に導入して複雑な成形解析が可能なツールを作成する.そのための基礎モデルはほぼ構築済みであり,今後はリラクゼーションを含めた応力-ひずみ特性の再現性を実験結果と比較し,モデルの改良を行う.また,昨年度は温間成形で問題となる成形性指標の一つであるスプリングバックの調査をVおよびU曲げ試験により実施した.これにより500℃以上の温度域で成形を完了することでスプリングバック量を大幅に低減できることを確認したため,それ以上の温度での大ひずみ応力-ひずみ特性を取得する材料試験法の検討に着手する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度取得した応力-ひずみ曲線をもとに,温度およびひずみ速度を考慮した材料モデルの構築から始める.その際,高温成形におけるスプリングバック予測には,成形中のリラクゼーションによる残留応力の低減が大きく影響することがわかっているため,引張負荷中の応力-ひずみ挙動の温度,ひずみ速度依存性に加え,変形中に試験を停止した際の応力緩和挙動についても高精度に再現できるモデルの構築を目指す.さらにその構成モデルを有限要素法に導入して,工具接触を伴う複雑な成形試験の高精度解析ツールを構築する.さらに本研究の目的である大ひずみ域での応力-ひずみ特性を反映できる材料試験の選定を行う.まずは穴縁に大きな単軸引張変形を付与できる穴広げ試験を検討し,その試験から計測されるパンチ荷重とストローク曲線に加工硬化特性が反映されるか否かを確認する.その後,構築した有限要素法解析を併用し,実験と解析で得られるパンチ荷重-ストローク曲線を一致させるような材料モデルのパラメータを同定して,そのパラメータで計算される応力-ひずみ曲線を該当材料の応力-ひずみ特性とする.パラメータ同定に際しては数値最適化手法による自働同定システムを確立する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
有限要素法解析ソフトウェアであるABAQUS(600,000円)を購入予定である.これに提案する材料モデルを導入して穴広げ試験などの大ひずみ域応力-ひずみ特性を反映する試験の詳細解析を実施する.また,穴広げ試験用金型作成に200,000円を予定している.本試験により大ひずみ域での応力-ひずみ特性を反映したパンチ荷重-ストローク曲線を取得する.また,金型を設置するための試験機は既に所有しており,本試験機ではパンチのストローク速度を自由にコントロールすることができ,さらに内蔵カートリッジヒータにより等温状態での試験が可能である.12月の国際会議Asia-Pacific Conference on Engineering Plasticity and Its Applicationsで成果発表を行うための旅費として300,000円を予定している.ここでは本年度の成果である鋼板の高温引張試験から得られた応力-ひずみ特性,V,U曲げ試験から得られた高温成形におけるスプリングバック量の温度依存性,および高温でのリラクゼーション特性がスプリングバック量に与える影響を報告予定である.
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