2012 Fiscal Year Research-status Report
ホットスタンプにおける成形限界予測のためのシミュレーション援用材料試験法の開発
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23760115
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
濱崎 洋 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30437579)
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Keywords | 熱間成形 / 材料モデル / CAE |
Research Abstract |
熱間,温間における金属材料の機械特性を調査するため,ボロン鋼および高張力鋼板の引張試験を実施した.試験温度は室温から900℃までを100℃刻みで,また,公称ひずみ速度を0.001,0.01,0.1毎秒の3速度で実施した.その結果,いずれの材料においても温度の上昇に伴って流動応力が低下し,加工硬化も弱くなり,また,延性が向上するという顕著な温度依存性が観察された.さらに,室温ではひずみ速度が応力-ひずみ曲線にほとんど影響を及ぼさなかったが,500℃以上の試験ではひずみ速度が上昇するに連れて流動応力が上昇するひずみ速度依存性が観察された.また,ひずみ速度依存性の度合いは,高温になるほどより顕著になることが確認された. また,温間でのプレス成形では除荷時の弾性回復が常温成形時に比べて減少すると考えられるが,スプリングバックフリー成形は不可能である.そのためCAEで形状精度を予測するために,繰返し曲げ試験を実施してバウシンガー効果を調査した.その結果,高温域においてもバウシンガー効果は発現するが,温度の上昇に伴ってその程度は弱くなっていることを確認した.また,高温ヤング率を調査したが,顕著な温度依存性が確認できた. これらの高温材料特性を表現できる超過応力型の弾粘塑性応力-ひずみ構成モデルを提案し,それを汎用有限要素法ソフトウェアに組込むための応力積分法を確立した.また,それを組込んだ有限要素法ソフトウェアにて1要素の単軸引張試験解析を実施し,組込み手法の妥当性と提案した弾粘塑性モデルの有効性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は熱間,温間プレス成形のCAE技術の開発である.特に成形中の割れやしわの発生,温間成形除荷時に起こるスプリングバックの高精度予測を可能とすることを必要条件として掲げている.それらを達成するためには,まず成形材である鋼板の室温から800℃程度までの種々の温度と変形速度での変形特性(応力-ひずみ曲線),特にスプリングバック予測ではヤング率とバウシンガー効果の程度を正確に把握し,それらを高精度に記述できる材料モデルの構築が最重要課題となる.ここまでの研究内容では鋼板,ボロン鋼の高温単軸引張試験を実施して温度とひずみ速度の影響を調査した.また,高温では板材の引張圧縮試験が困難であるため,繰返し曲げ試験から応力反転時のバウシンガー効果の程度を見積もる方法を提案した.さらにこれらの変形特性を記述できる弾粘塑性構成モデルの提案と,それを有限要素法ソフトウェアに組込むための方法を提示した.以上により,これまでの研究において当初の目標の2/3は達成できたと考えている.残る課題としてはモデルの妥当性の検証,モデル中の材料パラメータ決定手法の確立など,本研究成果を使用する上で整備しなければならない周辺技術の開発を行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,次の課題について研究を推進する.(1)提案した弾粘塑性モデルの材料パラメータ決定,(2)熱間,温間成形試験と提案手法による数値解析結果の比較.(1)のパラメータについては,高温単軸引張試験から得られる比例経路での応力-ひずみ曲線と,繰返し曲げ試験から得られる荷重-変位曲線から数値最適化手法を併用した逆解析により材料モデル中のパラメータを同定する理論とシステムの開発を実施する.また,(2)の成形試験については温間での張り出し成形試験を実施し,変形中の温度,ひずみ分布,成形後の形状や成形限界などを求め,それを数値解析と比較することで提案モデルの妥当性を検証して行く.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は成形試験に必要な熱電対などの消耗品を購入し,また,本研究成果の論文掲載費などに研究費を使用する予定である.
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