2011 Fiscal Year Research-status Report
クラスタープラズマによるコーティング除去技術:ガラスレンズ成型金型への展開
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23760125
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Research Institution | Fukuoka Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
池田 健一 福岡県工業技術センター, 機械電子研究所, 主任技師 (30416515)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | プラズマ / コーティング除去 / 金型 |
Research Abstract |
被加工物にプラズマ中で負の高電圧を印加すると、高速のイオンが衝突し、除去加工が進展する。ただし、被加工物が絶縁体の場合は、表面に正電荷が蓄積するため、イオンが衝突できなくなる。それを解決するために、負の高電圧を印加していない時に、正電圧を重畳させることで、プラズマ中の電子を入射させ、電荷を中和させる方法を試みた。絶縁体であるSiCセラミックス上のDLC除去実験を行った。基本的条件は、超硬合金上のDLCを除去できた次のような条件とした。プラズマ原料ガスは、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)、ガス圧力は0.1Pa、プラズマ生成用RF電源(13.56MHz)の出力は30W、パルス電源の負電圧は大きさ:4kV、周波数:1kHz、パルス幅:10μsとした。正電圧を重畳しない場合は、異常放電が多発しパルス電源が過電流で停止してしまった。正電圧を重畳した場合は、異常放電が発生せずに除去加工を行うことができた。なお、正電圧の条件は次の通りである。正電圧の印加開始のタイミングは、電源安定の理由から、負の高電圧印加終了の20μs後に設定されている。正電圧の大きさは300Vまでの可変であるが、100V以上にするとプラズマが消滅することがあるため、半分の50Vに固定した。正電圧の印加時間は、上記のパルス周波数(1kHz)の場合に設定可能な範囲(~50ms)内で、10,20,30,40msと変化させた。プラズマ照射部と非照射部の境界を測定すると除去による段差が生じていたこと、および、正電圧印加回路に約20mAのピーク電流が発生していることから、電子が流入して蓄積した正電荷を中和させて除去加工が進展したと考えられる。また、除去速度は正電圧の印加時間に線形に増加することが分かった。このことから、上記の条件では、正電荷の中和が十分でないために、正電圧印加時間が長いほど中和が進展していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
正電圧を重畳することで、正電荷の蓄積を抑制し、絶縁体(SiCセラミックス)上のDLCを除去加工できることが明らかになった。しかし、正電圧の条件による依存性を十分には明らかにすることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、最初に、平成23年度に不十分だった絶縁体上のDLC除去過程の解明を行う。正電圧の大きさを50Vでしか実験できなかったので、プラズマが消滅しない範囲で幾つかの条件(25V,75Vなど)で実験を行う。また、高電圧プローブを購入し、電圧波形を測定し、詳細な分析を行う。次に、各種プラズマによる平板上のコーティングおよび下地の加工特性を定量化し除去過程の解明を行う。プラズマの原料は、クラスターとしてはC60およびC4F8、化学的作用が期待できるO2、一般的なものとしてArを使用する。加工対象物は、金型素材が超硬合金の場合は、DLC(Siドープ)、SiC(中間層)および超硬合金(下地)とし、金型素材がSiCセラミックスの場合は、DLC(Siドープ)およびSiCセラミックス(下地)とする。評価値は、加工速度および粗さとする。平成25年度は、レンズ成型金型上のコーティングを下地を粗くせずに除去できる条件を検討する。現在の金型によるガラスレンズ成型では、アスペクト比が1/4以下のものが大多数である。そこで、金型の形状は球とし、アスペクト比は1/4に固定する。大きさは、開口径で2、4、8および16mmの4種類とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としては、超硬合金、SiCセラミックス、DLCコーティング、高電圧用プローブなどに用いる。旅費としては、学会(応用物理学会など)発表に用いる。
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