2011 Fiscal Year Research-status Report
異なる感覚間の予測と実際の差を考慮した感性解析法の開発
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23760127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 秀吉 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20396782)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感性品質 / 感覚モダリティ遷移 / 予測 / テクスチャ / 触感 / 質感 |
Research Abstract |
本研究計画は,異なる感覚モダリティの時系列的な遷移における予実差が感性品質の知覚に与える影響を明らかにし,予実差の効果を考慮した新しい感性解析法の開発を目指している.本研究計画期間においては,製品表面のテクスチャの触感を対象として、視覚による予測評価と触覚による実感評価との差異が、事後評価に与える影響を明らかにする感性解析手法を提案しその有効性を検証する.本年度は,以下の3点について検討した.(1)視覚と触覚で異なるサンプルを同時に合成提示する装置の開発: ハーフミラーを用いて,視覚用サンプルを見ながら別の触覚用サンプルを触ることのできる仮想合成装置を開発した.視覚側,触覚側の光源のバランスを最適化することにより,被験者に違和感を与えない合成提示を可能とした.(2)視覚と触覚による評価の予実差が事後評価に与える影響を評価する方法: (1)の装置を用いて視覚,触覚サンプルを合成提示し,予実差とその効果を解析する方法について検討した.調べたい物理属性を系統的に調整したサンプルを2対用意し,視覚による予測,触覚のみ,および見てから触る場合の3条件における触感の評価をえる.そして,視覚による予測と見てから触る場合の評価の差異を予実差として,触覚のみの評価と見てから触る場合の評価の差異を視覚による予測の効果として抽出する.工業製品で標準的に用いられるプラスチックサンプルを用いて上記手法を適用し,表面の「粘つき」「粗さ」等において,予実差と視覚による予測の効果を確認した.(3)視覚による触感の予測が手指の触察動作に与える影響: 視覚による触感の予測が手指の動作などに与える影響について,なぞり動作を対象として検討した.手指動作の要因として,視覚による触感予測,および評価ワードの影響を評価した.その結果,評価ワードの影響が支配的であり,視覚による触感予測の効果は限定的であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要における,(1)視覚と触覚で異なるサンプルを同時に合成提示する装置の開発,および(2)視覚と触覚による評価の予実差が事後評価に与える影響を評価する方法については,当初の研究計画通りに進展している.ただし,(2)において,視覚予測,触覚のみ,視覚予測後の触覚の3条件において独立して取得した感性評価値間の差異を,予実差,および視覚予測の効果としているが,被験者の評価スケールが一致しているかどうかについて新たな疑問が生じている.また,視覚予測の効果は確認できたものの,その効果の要因についてさらなる考察が必要である.(3)視覚による触感の予測が手指の触察動作に与える影響については,その影響は限定的であった.手指の触察動作においては,触察の目的,意図,および個人差が大きく影響していると考えられる.今後は,触察動作が触感に与える影響を調べ,触察動作を検出して触感評価の要因として考察する方法を検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画,および今年度の研究成果を踏まえて以下の研究に取り組む.(1)視覚による触感の予測が触覚による触感評価に与える影響とその要因: 触覚のみの触感と視覚予測を伴う触覚による触感を直接的に比較して評価することができる評価装置および評価法を開発する.これにより,視覚予測が触感評価に及ぼす影響を厳密に評価することを可能とし,その条件および要因を解明する.触感を構成する主要な感覚評価軸である,「粗さ感」を対象として,表面粗さをパラメータとしたサンプルを用意し,視覚予測が触感評価に及ぼす影響を粗さのスケール上で定量的に検証する.さらに,効果の要因として,同化や対比などの期待効果の概念が適用可能かどうかを検証する.(2)手指の動作パラメータが触感に与える影響: 手指の動作によって触感が異なる場合,触感評価の差異における要因として考慮する必要がある.そこで,触察動作における動作パラメータが,触感に与える影響について,工業製品で一般的に用いられるプラスチックテクスチャのサンプルについて実験的に調べる.具体的には,触察速度,および押圧の影響について検討する.(3)視覚のみから予測されるテクスチャの触感の評価法および定量化の検討: 視覚によるテクスチャ表面の触感の予測を,触覚の知覚次元上にマッピング可能な評価手法を検討する.これにより,視覚による予測と触覚による評価との差異を直接評価することを可能とする.また,視覚によるテクスチャ表面の触感の予測を説明する視覚的特徴量について検討する.具体的には,触感を構成する主要な感覚評価軸である,「粗さ感」に対する視覚的予測を説明する画像の特徴量について検討する.これを可能とすることにより,主観評価に頼らない触感予測の評価指標を構成する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策(1)から(3)それぞれにおいて,以下の研究費使用を計画している.(1) 作成する実験装置の材料費,実験協力者への謝礼,評価サンプルの購入,作成に必要な経費を計画している.(2) 触察動作における動作パラメータ(触察速度,および押圧)を取得可能なセンサー,実験協力者への謝礼,評価サンプルの購入,作成に必要な経費を計画している.(3) テクスチャ画像の特徴量を検討するためのワークステーションおよび画像処理プログラムの購入,実験協力者への謝礼,評価サンプルの購入,作成に必要な経費を計画している.今年度および次年度の研究成果を発表するための国内・海外旅費,論文掲載料,英文校正,その他,資料,印刷費等を計画している.
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