2012 Fiscal Year Research-status Report
異なる感覚間の予測と実際の差を考慮した感性解析法の開発
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23760127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳澤 秀吉 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20396782)
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Keywords | 感性品質 / 設計 / 期待効果 / 質感 / 触感 / クロスモダリティ |
Research Abstract |
本研究計画は,異なる感覚モダリティの時系列的な遷移における予実差が感性品質の知覚に与える影響を明らかにし,予実差の効果を考慮した新しい感性解析法の開発を目指している.本研究計画期間においては,製品表面のテクスチャの触感を対象として、視覚による予測評価と触覚による実感評価との差異が、事後評価に与える影響を明らかにする感性解析手法を提案しその有効性を検証する.本年度は,以下の3点について検討した. (1)テクスチャの触覚知覚に視覚の予測が与える影響の定量評価法の開発,および視・触覚合成提示装置の改良:視覚予測後の触覚と触覚のみの二条件で提示したテクスチャサンプルを直接比較する評価手法を考案した.すなわち,触覚のみの条件において,表面性状のパラメータ(たとえば表面粗さ)が段階的に異なる複数のサンプルを用意し,これらと視覚予測後の触覚の条件で提示したサンプルとを比較しその一致性を評価させる方法である.これにより,視覚予測を伴う触覚知覚を触覚上のスケールにマッピングし,実際の表面性状パラメータとの差違から視覚による期待効果を定量的に評価することを可能にした. (2)テクスチャの触覚的粗さ感に視覚の予測が与える影響(期待効果)の実験:(1)で開発した評価手法および装置を用いて,テクスチャの粗さ感における視覚の期待効果を抽出する実験を行った.その結果から,視覚で予測した粗さ感と触覚の粗さ感の差が対比して作用する効果を定量的に確認した.色彩などに見られる対比効果と同様に,視覚・触覚間の異なるモダリティ遷移間においても,対比効果が発生することが明らかとなった. (3) 触察時の挙動および押圧を計測する装置の開発:テクスチャを触って評価している際の手指の挙動および押圧を測定する装置を開発した.これにより,主観評価の発生要因の一つとして考えられる,触り方を定量的に観察することを可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までで,視覚と触覚の間の予実差が質感の知覚に与える期待効果を評価する方法およびそれに必要な実験装置の整備を完了した.また,表面の粗さ感を対象とした実験から,それらの妥当性を検証した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画,および今年度の研究成果を踏まえて以下の研究に取り組む. (1)視覚による触感の予測が触覚による触感評価に与える期待効果の要因モデル構築と検証: 今年度までで,視覚による触覚の期待効果を定量的に評価する手法を開発し,テクスチャの触感における期待効果を確認した.しかし,期待効果がどの様な条件で発生するかは未解明のままである.そこで,今後は,期待効果の発生要因メカニズムを数理的にモデル化し,実験により検証する.これまでの実験結果の傾向,および期待効果における分野横断的な周辺研究の調査から,情報理論を用いた期待効果の数理モデル構築を試みる.具体的には,視覚による予測を主観確率分布としてモデル化し,その情報エントロピーによって予測の不確実性を,発生事象(触ったときの触覚)の主観確率の自己情報量を予実差の度合いとして定量的に表す.そして,情報エントロピーと自己情報量を変数とした関数として期待効果を説明するモデルを検討する.このモデルの妥当性を,テクスチャの粗さ感における実験から検証する. (2)触察時の行動パラメータと内的パラメータの関係解析: 今年度で,触察時の挙動および押圧を計測できる装置を開発した.今後はこれを用いて,視覚予測の不確実度,予実差の大きさ,期待効果など内的なパラメータと挙動や押圧などの行動パラメータの関係を調べる.この関係が明らかとなれば,主観評価では捉えることが難しい内的パラメータをオンラインで計測することが可能となる. 以上の成果を統合して,期待効果の理論および評価検出手法として成果をまとめ論文,国際会議等で発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の研究費使用を計画している. ・実験装置改良のための材料費,実験協力者への謝礼,評価サンプルの購入・作成に必要な経費を計画している. ・実験データ解析のためのワークステーションおよび解析ソフトウェアの更新を計画している. ・研究成果を発表するための国内・海外旅費,論文掲載料,英文校正,その他,資料,印刷費等を計画している.
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