2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23760133
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 俊完 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (40401517)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 電界共役流体 / 可変焦点レンズ / マイクロ液圧源 / マイクロマシン / MEMS / ECF |
Research Abstract |
耐衝撃性を有しコンパクトでありながら焦点を調整可能な液体マイクロレンズを実現するために,直流電圧の印加により電極間に活発な流れが発生する電界共役流体(ECF)の発生圧力を用いたシステムを開発している.本年度は,このマイクロ液圧源として,MEMS技術で製作する三角柱-スリット形電極からなるECFマイクロポンプを用いた.厚膜レジストと電解めっき技術を融合させたプロセスを用いて,スリット幅0.2mm,電極間隔0.2m,三角柱の先端角度30°の主要寸法パラメータを有するECFマイクロポンプを製作した結果,三角柱-スリット形電極対の平面集積化することができた.電極対の高さは0.4mm程度である.印加電圧は4kVでは,直列10対のみの電極対からなるECFマイクロポンプの圧力は79 kPa,平面集積化による直列10対×並列3対の場合は73kPa,直列10対×並列5対の場合は70kPaであった.一方,吐出流量については,2kV印加時,直列10対のみECF電極対からなるマイクロポンプの流量は34 mm3/sであり,平面集積化直列10対×並列3対の場合の流量はその2.2倍74mm3/sで,直列10対×並列5対場合の流量はその3.2倍110mm3/sであった.この結果から,ECFマイクロポンプの吐出流量は並列化されたECF電極の数とともに増加することが分かった.COMSOL3.5aを用いて,シミュレーション解析を行った.これにより薄膜レンズの変形特性を明らかにした.解析条件に直径5mmのPDMS(Polydimethylsiloxane)製のレンズ薄膜(ヤング率3MPa)に追従圧力0~20kPaを条件に与えて,膜厚0.05mmと0.1mmについてレンズの変形形状を解析した.また,変形形状の座標データから焦点距離を算出した結果,実用性のある焦点変化が得られることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)レンズの変形シミュレーション解析:透明薄膜を用いたレンズの基本的光学的特性が明らかにした.その結果,印加圧力によって焦点距離が変化することが確認された.また,収差解析として代表的な単色光収差であるザイデルの5収差(球面収差,コマ収差,非点収差,湾曲収差,歪曲収差)のうち非点収差以外の解析を行い,レンズ瞳中心近傍のみをレンズとして使うことがレンズの性能向上に役立つことが確認された.(2)MEMSプロセスにおけるNiめっき技術:ECFジェット発生部を製作するためのMEMSプロセスにおいて,技術的に最も難しいNiめっきの適正条件を見出した.また,Niめっき液の内部応力を調整することが重要であることも明らかにした. (3)ECFジェットによる可変焦点型マイクロレンズの製作:実際にECFジェットによる可変焦点型マイクロレンズの製作に成功した.その結果,印加電圧5kVにおいてECFジェット圧力が17.5kPaであった.また,その実験においてレンズ薄膜が変形し,可変焦点型マイクロレンズとしての可能性を示した.(4)ECF可変焦点型マイクロレンズのデジタル計測:ECFジェットを用いたレンズではECFジェット圧力を一定に保つ,すなわち制御することが不可欠である.そこで,ECFジェット圧力,電流値,印加電圧を自動的に記録しながら,ECFジェット圧力を制御できるアプリケーションを開発した.また,その実験装置の構成も設計かつ実現した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マイクロレンズ用のゴム膜の製作:シミュレーションから得られた結果からマイクロレンズ用のゴム膜を製作する.本研究でのシリコンゴム膜はレンズの形状になるため,優れた光透過性を持つPDMS (polydimethylsiloxane)を用いる.より高性能なマイクロレンズの実現のため,超精密機械加工を用いて鋳型を製作し,非球面などの複雑なマイクロレンズのシリコン膜を形成する.また,さらなる小形化のためにMEMS技術による鋳型を製作する.(2)マイクロレンズシステムの構築と性能評価:マイクロ流路,ECFジェット発生部,レンズ膜などを別々に製作し,次にこれらを高い精度でレンズシステムを組み立てることが困難になる.これを解決するためにMEMS技術を用いて製作とともにMEMS装置上で組み立てができる製作プロセスを開発する. (3)マイクロレンズシステムのアレイ化と応用:本研究のマイクロレンズはMEMS技術によるバッチプロセスであるため,簡単にマイクロアレイ化が可能である.アレイ化により光通信デバイスなどに応用できる微細で高密度なマイクロレンズアレイを実現して,その有効性を実験的に明確にする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロポンプを試作した後,その特性をテストするために,形状測定装置を平成24年度に計上した.また,マイクロレンズを制御するための制御・計測器を平成24年度に計上した.マイクロポンプの流動の可視化による観察・測定するためには高速度カメラが必要であるが,申請者が所属する研究グループのものを使用することができるため,申請していない.本研究は先端な研究であり,研究成果を国内・国外などで発表するため,旅費を計上した.なお,各年度において研究経費の90%を超える費目はない.*会計上の理由で残額が生じているが,すでに使用済みである.
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Research Products
(14 results)