2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23760141
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
川口 雅弘 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部高度分析開発セクター, 副主任研究員 (40463054)
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Keywords | DLC / PBII&D / tribology / hydrogen contents |
Research Abstract |
今年度は,AIP法で成膜した水素フリーDLC膜に対して,PBII&D法を用いた水素イオン注入を行い,摩擦摩耗特性におよぼす水素含有量の影響について検討した.また,PBII&D法で成膜したDLC膜(水素含有量を変化させている)との比較を行い,DLC膜の構造について水素含有量の観点より検討した.その結果,以下の様な知見を得ることができた.①水素フリーDLC膜に12at%程度まで水素を注入し,ラマン分光分析,XPSおよびTEM-EELSによるsp3/sp2比について検討した結果,水素注入量に伴い水素含有DLCに近づく傾向が現れたが,同程度の水素含有量のDLC膜までには至らなかった.②摩擦摩耗試験を行った結果,摩擦係数,比摩耗量ともに水素注入量に伴い若干増加する傾向が現れたが,水素含有DLC膜の変化ほどではなかった.③ドライ環境下における水素フリーDLC膜のしゅう動は,表面のグラファイト化による表面終端化の効果が支配的であると考えられる.一方で水素含有DLC膜のしゅう動は,表面のグラファイト化の効果が支配的であると考えられる.以上の結果から,水素フリーDLCは水素イオンを注入しても初期のsp3構造が維持されていることが考えられる.一方,注入した水素イオンの存在状態,特に遊離水素を明確にすることで,DLC膜の構造について更に深く言及できる可能性がある.現状では膜中の遊離水素の定量化が困難であり,今後の課題の一つである.
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