2012 Fiscal Year Research-status Report
極微細シリコン構造内における気体の分子流を利用した集積化ガスシステム
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23760145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 雅則 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80447424)
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Keywords | ピラニーゲージ / 高アスペクト比トレンチ / 超臨界流体製膜 / MEMS |
Research Abstract |
本研究はシリコンの深掘りエッチングによって150-200nm程度の幅の垂直溝を形成して、その中で気体分子を制御・計測することが目的である。昨年度は超臨界流体製膜技術をもちいて垂直溝の表面に銅の製膜を行うことでギャップを狭窄させ、幅50nm、深さ5umという溝(縦横比1:100)の形成に成功し、応用として圧力センサーを開発した。銅はエッチングが困難な材料であるため、今年度は素子分離のために「ステルスダイシングを用いた劈開線埋め込み技術」を開発した。全てのプロセスに先立って、シリコン基板中にレーザーによって改質層を形成するステルスダイシングを実施しておき、改質層の深さや本数の制御によってプロセス中はウエハの構造健全性を保ちつつ、最後に狙った位置で容易に劈開して素子分離ができるというものである。プローブなどの針型MEMSデバイスの基板分離のためにも有効であることが分かった。一方LSIとの集積化に向けた研究については、CMOS集積回路と圧力計を同居させるプロセス統合手法が確立し、0.6ミクロンCMOSテクノロジを用いた読み出し用アンプ回路の試作を行った。 また、研究代表者は「極微細シリコン立体構造を用いた熱伝導圧力センサ」の研究で博士号を取得した。この研究は本助成事業で昨年度開発した「超臨界流体製膜によるギャップ狭窄技術を用いたPirani型圧力センサー」を代表的な成果の1つとし、従来は基板平面と平行な方向にしか作製できなかった数十nmの微細ギャップを基板に垂直方向に形成できる技術を開発した点、その応用として大気圧下における極微細構造中のガス分子の振る舞いを利用した省面積・堅牢・CMOSポストプロセス親和性に優れた圧力センサー(数十気圧までの測定レンジ)を実現した点を主眼とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記したように、システムの要素である圧力計の革新が実現し博士論文として成果が出た。またシステム化・MEMS-LSI集積化への要素技術としてプロセス統合手法が確立した。一方、ガスポンプの実装については未だ実現しておらず、プラットフォームとして必要な機能を集積する準備が完全には整っていない。全体としてやや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ガスポンプと圧力計の実装を第一に進める。今までに明らかになっている技術的な課題はMEMS-LSI集積化システムにふさわしいプロセスコンパチブルなキャビティの作製と封止方法であり、LSI配線層や絶縁トレンチを含んだ非常に起伏の大きい構造に対してハーメチックシールを行う手法を確立することが必要である。厚膜の感光性接着層・コンフォーマル製膜技術・基板接合技術を駆使して実現に向けて研究を進める。ガスポンプと圧力計の実装が順調に進めば10月締切のLSI試作で制御・読み出し回路を含めたLSI側の作製を行い、ポストプロセスでガスポンプと圧力計を実装して、システム化を実現する。 派生したステルスダイシングを用いた劈開線埋め込み技術は集積化プローブデバイスやシリコンフォトニックデバイスの作製に有効であることが明らかになったので、その方面への応用研究を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一括購入などによって材料費が圧縮され、また他の研究との相乗りプロセスによって電子線描画装置等の装置使用料が少なくなった。次年度のための材料・実験器具など物品費と、各種プロセス装置や測定設備の使用料へ主に充当する。また、海外出張旅費1件に充てる。
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