2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造による表面修飾が気体分子の散乱挙動に与える影響の詳細解析
Project/Area Number |
23760146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杵淵 郁也 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30456165)
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Keywords | 流体工学 / 希薄気体力学 / マイクロ気体流れ / 分子線 |
Research Abstract |
ナノスケール三次元構造で修飾された表面上での気体分子の散乱機構を明らかにし,マイクロ・ナノデバイス内部における気体流れを制御するための表面設計に指針を与えることを目的として,単層カーボンナノチューブ修飾表面に入射する分子線の散乱挙動を計測した.固体原子との質量差に起因してエネルギー適応しにくい傾向のあるヘリウム原子に対しても,カーボンナノチューブ修飾表面は高い適応係数を示すことが確認された.フリースタンディング膜を対象とした散乱実験とモンテカルロシミュレーションによる解析から,入射分子の多くが膜表層部においてカーボンナノチューブと多数回の衝突を経ることで十分なエネルギー交換が行われることが明らかになった. さらに,様々な気体種や入射条件に対して散乱挙動の知見を得ることを目指し,水分子線の生成を目的とする加熱ノズル分子線源と,解離化学種の生成を目的とする衝撃波加熱分子線源の開発に取り組んだ.開発した水分子線源を用いてグラファイト表面での散乱計測を行った結果,水分子の表面への高い吸着エネルギーに起因して,入射並進エネルギーのわずかな差異により散乱角度分布やエネルギー適応の程度が著しく変化することが確認された.また,衝撃波加熱分子線源の性能評価では,管形状等の最適化を行った無隔膜小型衝撃波管を用いることで,1 eV以上の並進エネルギーを持つ分子線を0.5 Hzの動作周波数で生成することができた.さらに,試料気体に酸素を用いた場合,解離した酸素原子線が計測され,解離度を初期圧力比によって制御可能であることが確認された.今後,新規に開発したこれらの分子線源を利用して,カーボンナノチューブ修飾表面を対象とする散乱計測を計画している.
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