2011 Fiscal Year Research-status Report
乱流による高分子溶液劣化のハイブリッドシミュレーションによる解明
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23760156
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 威 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345946)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子溶液 / 乱流 / ハイブリッド計算 / 大規模並列計算 |
Research Abstract |
乱流の直接数値計算(以下DNS)と非常に多数の高分子鎖モデルのブラウン動力学計算(以下BDS)が連結したハイブリッドシミュレーションコードを開発し,高分子鎖が乱流により強い張力を受けて切断される過程を取り込んだ,乱流による希薄高分子溶液劣化の大規模並列数値シミュレーションを実行する.溶液劣化の時間依存性とその統計法則を明らかにし,乱流のエネルギー散逸や抵抗低減則といったマクロな乱流統計量への劣化の影響を,メソスケールのレベルから理解する事を目的とする. 初年度は,これまで開発してきたハイブリッドシミュレーションコードを基盤にして,高分子鎖の切断過程を取り入れた新しい計算コードの作成を行った.まず鎖の切断過程を念頭において,高分子鎖の時間発展法について,これまでの研究で用いた手法からの改良を行った.この改良により,高分子鎖モデルがより安定に高精度に積分できるようになることが確認できた.切断過程の解析に向けて,まず切断を伴わない場合の高分子の乱流場への影響について調べるために,乱流計算に用いる計算ノードと高分子計算に用いる計算ノードを独立させた大規模並列計算を実行した.特に高分子と乱流場の相互作用を特徴付ける統計量の振る舞いに着目した.その結果,分散させる高分子の濃度を大きくすると,乱流のエネルギー散逸率の強い逓減が生じること,エネルギースペクトルの高波数側が大きく変形することが確認できた.またワイセンベルグ数を増大させると,同様の効果が得られることが確認できた.さらに高ワイセンベルグ数の場合には,エネルギースペクトルは特徴的なべき則を示すことを見いだした. これらの研究成果は国際会議・国内学会等で発表され,得られた主な成果は論文としてまとめ,現在J. Fluid Mech.に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に切断過程を取り込んだプログラムコードを作成する予定でいたが,高分子鎖の時間発展法に新たな問題点がみつかり,その解決に時間を費やすことになった.そのため,初年度に切断過程を取り入れたプログラム開発およびそのテスト計算を実施することが出来なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究での遅れを取り戻すために,今年度は早速切断過程を取り入れたプログラムの作成に取りかかる.この作業を7月までに終えて,8月以降に本格的に定常乱流による高分子鎖の切断と,それに伴う溶液の力学的劣化の解析に取り組む. 具体的には,初年度で実施した高分子鎖の切断が生じない条件下で数値計算結果と,切断過程を導入した計算を実行し,抵抗低減率の時間変化の様子を比較する.得られた結果が実験結果と整合性があるか確認し,問題がある場合にはパラメータ設定を再度見直す.また切断高分子鎖の数密度や空間分布,ストレス場の構造などを解析し,得られた結果を十分吟味する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続きスーパーコンピュータ利用料に研究経費を割り当てる.最新の情報を得るために,専門図書の購入は必須である.また学会・国際会議等での研究成果発表のための旅費として経費を使用する.得られた研究成果の一部を論文としてまとめ,学術雑誌に投稿するための投稿料,及び英文校正費用などが必要である.
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Research Products
(12 results)