2012 Fiscal Year Research-status Report
乱流による高分子溶液劣化のハイブリッドシミュレーションによる解明
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23760156
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 威 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345946)
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Keywords | 高分子溶液 / 乱流 / ハイブリッド計算 / 大規模並列計算 |
Research Abstract |
乱流の直接数値計算と非常に多数の高分子鎖モデルのブラウン動力学計算を結合したオイラー・ラグランジュハイブリッドシミュレーションコードを開発し,高分子鎖が乱流により強い張力を受けて切断される過程を取り込んだ,乱流による希薄高分子溶液劣化の大規模並列数値シミュレーションを実行する.溶液劣化の時間依存性とその統計法則を明らかにし,乱流のエネルギー散逸や抵抗低減則といったマクロな乱流統計量への劣化の影響を,メソスケールのレベルから理解する事を目的とする. 2年目では,これまで開発してきたハイブリッドシミュレーションコードを発展させ,高分子鎖の切断過程を取り入れた新しい計算コードの作成を行った.ダンベルモデルからマルチビーズモデルへの高分子モデルの変更を行い,高分子の鎖長の変化が乱流の性質に及ぼす影響について,エネルギースペクトルの振る舞いやエネルギー散逸率の低減効果について詳細を調べた.その結果,鎖長の増大とともに乱流統計に及ぼす影響が非常に強く表れることが確認された.また高分子の弾性効果が大きい(ワイセンベルグ数が大きい)時,流れ場のレイノルズ数が小さくても流体運動は乱れた状態を維持することがわかった.この現象は弾性乱流として過去の実験で明らかにされており,弾性乱流の特徴的な性質してエネルギースペクトルのべき則の存在が知られている.本研究ではこの点に着目しエネルギースペクトルの振る舞いについて詳細に調べた.結果,エネルギースペクトルはワイセンベルグ数を増大させると弾性乱流と類似したべき則を示すことを発見した. これらの研究成果は国際会議・国内学会等で発表され,得られた主な成果は論文としてJ. Fluid Mech.に投稿し,最近受理、出版された.また国際会議CCP2012で発表した内容について,J. Phys.: Conf. Ser.にその成果をまとめ発表し、論文が受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度からの懸案事項であった高分子モデルの数値積分法についての問題が解決し,様々なパラメータ, 計算条件の下での並列計算が実行可能になり,現在いくつかの興味深い研究成果が得られつつある.乱流による高分子溶液の劣化計算は現在進行中であり,研究構想で想定した成果がまだ得られていない.これについて早急に研究を進める必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,ハイブリッド計算を進めていく.特に切断過程を取り込んだ計算を効率よく実施するために,計算コードの見直しを早急に行う.また結果の妥当性の検証を実験結果との比較を通して行いたい.そのためには,計算で用いるパラメータと切断条件について,議論の詳細を詰める必要がある.特に切断条件の設定が鍵となるため,いくつかの条件下で計算を行い,用いる条件の妥当性について吟味したいと考えている.また最終年度にあたる年なので,この3年の研究成果について論文にまとめ,雑誌に投稿することを考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度では、これまでより大規模な計算を実施したいと考えている。よってスーパーコンピュータの使用量について、研究費の多くを充てたいと考えている。また研究計画の最終年度にあたるので、研究成果について論文としてまとめたい。そのための論文校正費、投稿料に研究費を使用したい。
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Research Products
(11 results)