2011 Fiscal Year Research-status Report
発電用水車のFull-Loadドラフトチューブサージに関する研究
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23760158
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米澤 宏一 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00362640)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | キャビテーション / 旋回流 / ディフューザ不安定 |
Research Abstract |
水力発電用ドラフトチューブサージに関する研究を行った.従来の研究で行われた理論解析では,ドラフトチューブのディフューザ不安定効果および,旋回流がドラフトチューブ内のキャビティ挙動を不安定化することが示唆されていた.また,ドラフトチューブのディフューザの不安定効果はランナを抵抗体で置き換えた実験により実証されたが,旋回流効果について調べるにはランナを用いた実験が必要となる.そこで本研究ではランナと円錐ディフューザを用いたより実際に近い系についてモデル実験を行い,サージの発生原因について調べた.駆動用ポンプ,サージタンク,ボリュートケーシング,ランナ,ディフューザ,下流タンクからなる閉ループで構成される実験装置を作成し,実験を行った.また,CFD解析による流れ場の解析も行った.本年度は,以下のような結果を得た.(1)過大流量および部分流量いずれにおいてもサージが発生し得る.(2)部分流量のサージは,従来螺旋渦の旋回が原因であると考えられてきたが,円錐ディフューザを用いた本研究では旋回周波数とは異なる周波数のサージが観察された.(3)実験ではランナ上流のサージタンクの有無,CFD解析ではランナ入口の流量変動の有無に関わらず,過大流量,部分流量いずれにおいてもサージが発生した.これはサージの発生原因がランナあるいはそれより上流の要素にないことを表している.(4)ディフューザ出口にオリフィスを設けた場合,高流量ではキャビテーションサージが発生しなかった.したがって高流量におけるサージはディフューザの圧力回復効果が原因である.低流量では圧力変動の振幅は低下したが,サージは発生していた.この原因については,より詳細な検討が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では(1)過去のFull Load Surge に対する報告例を検討し,サージの周期と旋回流がキャビティの発生領域中央に達するまで時間を調べる.(2)1 次元流れ解析において,旋回流効果に対して時間遅れを導入し,その影響を調べる.(3)既存の実験装置に羽根車を模擬する羽根車を取り付け,旋回流効果によって発生するサージを再現する.予定であった.これらに関してはおおむね達成した.(1)(2)については,計画段階での予想に一致する結果が得られたが(3)での実験結果から,旋回流効果に対する時間遅れの影響以外にも新たな機構で不安定現象が発生している可能性が示唆された.そこで,次年度に計画していた(4) 直管を用いた実験を行う.(5) 実験で用いた系に対して非定常数値解析を行い,流れ場の詳細を検討する.を前倒しして実施し,新たな知見が得られた.以上のように,当初計画は順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえて今年度は新たに流れを強制的に加振してキャビテーションの非定常挙動に対する支配パラメータである,圧力変動に対する応答であるキャビテーションコンプライアンスと流量変動に対する応答であるマスフローゲインファクターの評価を行う.従来の研究で行ってきた一次元理論解析ではキャビテーションコンプライアンスが不安定性に重要な影響を及ぼすことが明らかになっているため,定量的に評価することで,理論の有用性を高めることが可能になる.マスフローゲインファクターは海外の研究で同様に重要なパラメータであることが示されている.今後はこれらを実験的に評価するために実験装置に流体加振器を設置し,また流量変動を精度よく計測するために配管系の改造および計測系の整備を行い,実験を行う.また,加振器を用いることで任意の周波数での流量変動が実現できるので,前年度の実験では自励的に発生することがなかった高周波数での加振を行い,旋回流の時間遅れ効果についても再度検証が可能となる.数値解析においては実験と同様な加振条件での計算を行い,実験結果を検証する.またドラフトチューブ内部でのエネルギバランスの評価など,実験では計測が困難な物理量に対して詳細な評価を行う.これらの最終的な目標として,従来の理論モデルの再検討を行い,必要であれば改良し,ドラフトチューブサージの発生機構の解明をより明らかにし,予測技術の向上を図る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが,前年度までの研究実施計画は予定通り達成している.また,本年度は当初計画にはなかった流体加振装置を新たに制作する予定であるが,従来の装置を改造・利用するなど,費用を最小限に抑え,年年度からの繰り越し分で補う.
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