2013 Fiscal Year Annual Research Report
流動ダイナミクスに基づく微生物識別法の開発と大偏差力学の展開
Project/Area Number |
23760161
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
花崎 逸雄 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10446734)
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Keywords | 機械工学 / 流体工学 / マイクロナノ流動現象 / 熱揺らぎ / ブラウン運動 / 時系列データ解析 / 力学系 / 統計力学 |
Research Abstract |
本研究ではマイクロナノ流動現象に観測される揺らぎ特性に注目した.例えば流体中の微粒子は熱揺らぎによるランダムな変位の集積により拡散現象を示す.また,微生物の中には自らの駆動によって流体中を自発的に流動する種が存在し,その代表的な存在であるE. coliは推進と方向転換をランダム性を含んだ形で組み合わせて泳動している.この移動の速さに関しても十分に長い時間スパンに対して拡散係数を考えることができる場合がある.ただし,拡散係数はランダムな変位の集積による全体的な移動のスピードを示す基礎的な尺度であり,そのダイナミクスの特徴を表すには必ずしも十分とは限らない.本研究では,同じ拡散係数を有するダイナミクスでありながら,その流動の特徴に違いがある場面について注目して研究を進めた.まず,楕円体や棒状のような非等方的形状を有する粒子が示すブラウン運動の異方性を統計数理の基本原理の一つである大偏差原理に基づいて解析を進めた.その結果,時々刻々の粒子の配向を直接知らずとも,軌跡データの解像度・精度・総量が十分であれば拡散係数の異方性を検出できることが明らかとなった.また,微生物の典型であるE. coliの数理モデルが生成する軌跡データに関して解析を行ったところ,その代表的な時間スケールに関する特徴も浮き彫りにすることができた.有限サンプル数の生データからレート関数などをはじめとする大偏差統計量を極限を取らない直接近似で求めると,一般にはその有限性に依存した数値が得られる.しかし,そのサンプル数依存性を評価することにより,時系列データが持つ特性を評価し得ることを明らかにできた.
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