2012 Fiscal Year Research-status Report
精密濾過における懸濁物質の堆積・閉塞過程の可視化と乱流クロスフローの効果
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23760164
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
板野 智昭 関西大学, システム理工学部, 准教授 (30335187)
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Keywords | 精密濾過 / 乱流 / 膜分離 |
Research Abstract |
精密濾過膜による懸濁物質の膜分離工程において、乱流クロスフローによる濃度分極と堆積層剥離過程の動的メカニズムを、光学機器を用いた観察から明らかにすることが、本研究の目的であった。観察は①「膜に捕捉され堆積する懸濁物質の運動の観察」と②「共焦点レーザ顕微鏡システムによる膜透過流の計測」からなる。初年度より精密濾過に関する技術情報収集と上記目的を実施するために必要となるコンパクトな流路の設計・試作を重ねてきた。昨年度は、購入した微差圧計や電子天秤などで、試作流路の出入り口での差圧計測と流量計測も重ねてきた。実験により濾過流路のマクロな特性(透過量、流入量、差圧等)の計測が行えるレベルまでには到達したものの、流路の入り口で発生していると考えられる小さな渦の発生やポンプからの微細な拍動などの諸因子が、クロスフロー濾過の効率に大きく働き、これらのマクロな量の再現性が乏しいことが分かってきた。そこで、研究期間を延長し、明らかになった問題点を解決し、当初予定していた目的を達成すべく取り組むことにした。一方で、矩形管内の乱流混合によりクロスフロー濾過の濾過量の上昇をある程度定量的に評価するため、従来より進めてきた剪断流れ中の定常不安定解のレイノルズ数依存性の計算を現在並列して進めている。これについては乱流遷移に関して大変興味深い結果が得られつつあり、25年度に開催予定の2つの国際会議での報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度より精密濾過に関する技術情報収集と流路の光学系を用いた観察を実施するために必要となるコンパクトな流路の設計・試作を重ねてき、昨年度購入した微差圧計や電子天秤などで、試作流路の出入り口での差圧や流量などマクロな特性量の計測を重ねてきた。その結果、一見同様に見える濾過プロセスであっても、複数のマクロな特性量が必ずしも高い再現性を以て一致していないことが分かってきた。流路の濾過特性の計測は行うレベルまでには到達したものの、流路の入り口で発生していると考えられる小さな渦の発生やポンプからの微細な拍動などの諸因子により、解析的に得られる矩形管内の層流状態が実はそれほど単純に維持されておらず、クロスフロー濾過の効率は、単に流速などから決まるレイノルズ数だけに依存するというよりも、むしろ、他の諸因子に大きく依存している可能性があると、現在推定している。このような事情から、残念ながら、今もって当初予定していた光学系機器の購入については控えている。想定外の学内業務負荷増に端を発する初年度計画の実施の遅れもひびき、2年経過した段階での成果は現状に留まるが、このような問題点は明らかになってきたことにより、研究期間を延長して問題点の解決および当初予定していた目的を達成したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
従来より進めてきた剪断流れ中の不安定な定常解(時間的に非定常な乱流状態ではないが、一部の統計量は乱流状態のそれと一致する)のレイノルズ数依存性の計算を現在並列して進めている。これにより乱流遷移に関して大変興味深い結果が得られつつあり、25年度に開催予定の国際会議での報告を予定している。クロスフロー濾過の実験と光学系による濾過プロセスの観察はなんとしても研究計画の1年延長となった本年度中には達成したい。このためには、①濾過流路のマクロな特性量の再現性を高めるための工夫がまず必要となるであろう。また、②流路に働く圧力が比較的高くなることから、流路の強度を保ちつつ、光学系による観察も可能とするための強化ガラスについて、再検討する必要がある。これをもって、観察面からの流路を観察する時の③顕微鏡深度の検討を含め、深度を調整するためのピエゾアクチュエータ制御系について選定を行わねばならない。学内外での研究者交流により、目的を達成するための情報収集にも努める必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額は研究計画最終年度(延長)となる次年度をもって全額使用予定である。ピエゾアクチュエータ制御系におよそ7割の予算を、成果発表となる国際会議の旅費などに2割程度を費やす。
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