2011 Fiscal Year Research-status Report
フローフォーカシングによる高速平面伸張流動場における粘弾性流体の流動挙動
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23760167
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
加藤 学 津山工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20370017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 平面伸張流動 / シースコア流れ / 粘弾性流体 |
Research Abstract |
合流部分の形状の異なる2種類のマイクロ流路内に,シースコア流れを用いて平面伸張流動場を作り出し,ニュートン流体と粘弾性流体について流れ場の観察を行った.ニュートン流体には水あめ水溶液,粘弾性流体には界面活性剤水溶液を用いた.中央を流れるサンプル流体流量を固定して,外側を流れるシース流体流量を変化させて観察を行った.まず,水あめ水溶液において,PTVから求めた中心軸上の流れ方向の流速変化と二次元ポアズイユ流れを仮定した場合の流速との比較を行った.その結果,水あめ水溶液では,シース流体流量が大きくサンプル流体が0.1 mm程度まで薄く引き延ばされる条件において,定常状態では両者は概ね一致する.しかし,低流量においては合流部分において一度減少し,後に加速していることが確認でき,二次元ポアズイユ流れを仮定した場合の流速と一致しない.合流部付近において流れと垂直方向の速度分布の変化が起きていると推察される.次に,界面活性剤水溶液において流れ場の観察を行ったところ,流れ場はシース流体流量によって,合流後に流れ場と垂直方向に膨らむ場合,流れ方向に伸張される場合,伸張された後に引きちぎられる場合の三種類に分類できる.また,伸張される場合において合流部の前から縮流が始まる場合がある.PTVによる流れ方向の流速変化では,水あめ水溶液と同様に合流付近で一度減少する.極小値をとる場所はシース流体流量の増加に伴い上流側に移動し,弾性力の影響により合流前からサンプル流体の加速,すなわち伸張変形が始まる.二次元ポアズイユを仮定した場合の流速の計算結果との比較では,いずれの場合においても実際の流速の方が計算結果よりも小さい.その差は流量によって異なることから,伸張後のサンプル流体が占める流路断面積の大きさによって壁面の影響の違いにより生じるものと推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の目標は,シースコア流れを用いて発生させる平面伸張流動場の速度分布,流路壁面の影響などの基本的な特性について把握し,粘性流体と粘弾性流体との流れ場の比較より流体の弾性力の影響を確認することである. 前者については,流れ場の観察およびPTVによる流速の測定結果と二次元ポアズイユ流れを仮定した場合との違いから速度分布について考察を行い,ほぼ目的は達成された. 後者については,粘弾性流体において平面伸張流動場が得られる流動条件を確認した.伸張速度の上昇に伴い伸張流動領域が上流側に広がることが確認できた.この流れ場における壁面の影響が速度分布に及ぼす影響および弾性の影響について明らかにできた. 以上のことより,初年度の目的はおおむね達成された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の実験結果をベースにして,本手法におけるサンプル流体の分子の配向状況を光学的異方性の測定から調査する.光学的異方性測定装置を組み込んだ測定装置の製作を行う.クロスニコル状態の二枚の偏光板を二組を配置し,その間にマイクロ流路を設置する.この時の伸張流動領域の光学異方性の変化をマイクロスコープを用いて撮影する.これら二方向からの観察から,伸張流動場後の緩和過程の領域において奥行き方向の情報が得られるものと期待される.期待する結果が得られない場合には,レーザーライトシートを用いて同平面内の可視化粒子の移動の様子を斜め方向から観察することで奥行き方向の情報を得ることを検討している.これらの観察結果から,分子配向の分布を考察する.平成23年度に得られている速度分布などの流れ場の情報と分子配向の分布とを併せて,本手法で得られる平面伸張流動場を用いた高分子結晶化過程観察の実験方法の策定を行う.最後に,実用化に向けての最終確認を行うために,高分子融液に対して本手法を適用する.カリフォルニア工科大学Kornfield研究室にある小型押し出し機用の流路を,同研究室の設備において平面伸張速度100 s-1を実現する仕様で装置の設計を行い,加工を外注して製作する.カリフォルニア工科大学において2,3週間を掛けて,高分子融液を用いて本研究において策定した測定手法の検証を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光学測定のための光学素子,光源の購入および装置の試作のための材料費,機械加工費,試料の購入を行う.加えて,カリフォルニア工科大学において試作機の検証実験を行うための渡航費および滞在費に充当する.
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