2011 Fiscal Year Research-status Report
低レイノルズ数環境での翼の非定常空力特性予測の研究
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23760169
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
池田 友明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発本部, 研究員 (00443276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 非定常空気力学 / 音響 / 低レイノルズ数 |
Research Abstract |
初年度は、低レイノルズ数での翼周り流れにおいて、数値計算では確認されている渦変動と音響変動のカップリングが存在することを実証するための風洞実験を実施した。NACA0012翼型模型に小型非定常圧力センサーを埋め込み、東北大学浅井・永井研究室の協力を得て減圧型の低レイノルズ数風洞で実験を行った。実験ではレイノルズ数を固定した上でマッハ数・迎角を変化させ、圧力センサーから非定常変動周波数を取得した。 年度前半に実施した予備実験を通して、風洞壁と翼模型との間に固有な離散周波数を持つ音響共鳴が存在し、翼周り流れの非定常変動が増大する条件においては、共鳴によって決定される周波数が支配的となることがわかった。この共鳴を抑える目的で、風洞壁にウレタン製の吸音材を据え付けるための吸音壁を製作し、本試験に用いた。 この後実施した本試験では、風洞壁に起因する共鳴を完全に抑えることは出来なかったが、翼の後流と境界層それぞれの不安定周波数と壁の共鳴振動数の相互作用により、マッハ数や迎角に対し周波数特性が大きく変化する様子が捉えられた。これは、低レイノルズ数翼周り流れにおいて、異なる周波数選択メカニズムのカップリングが存在していることの証明に繋がる大変重要な発見であり、今後より詳細に流れ場の測定を行う予定である。 また、同様の流れ環境下における、最適翼型開発手法のフィージビリティースタディーとして、キャンバーを有する翼に対する数値計算を上述の実験と並行して行っている。こちらは6%厚みのNACA4桁翼を対象として、非定常変動の発生を抑えつつ空力特性が向上する翼型の知見を得ることを目的とする。現在、キャンバーを後縁側に置く場合に非定常変動を抑え空力特性が向上することがわかっている。これに関しては、低速風洞を用いた風洞試験も併用しながら今後研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマの最重要課題である、低レイノルズ数翼周り流れにおいて、渦変動と音響変動のカップリングが存在することの風洞実験を通した証明に目処がついたことが挙げられる。実験では予期されていなかった風洞壁と翼模型との音響共鳴が出現するなどの困難があるが、今後数値計算を用いて風洞壁を含めた流れの再現を検討しており、追試験により得られるより詳細な流れデータのとの比較を通して流れ現象の解明に繋げたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、減圧風洞で得られる実験データは、圧力センサーと感圧塗料による圧力値のみである。現在、東北大学において、減圧下で熱線流速計を用いた速度変動の取得方法の研究を行っている。熱線プローブに比較的高価な白金線を使用し、プローブを高温に保つことで希薄流れの計測が可能となることがわかってきている。今後はその成果を利用して、より詳細な流れデータの取得を行う。 また、低レイノルズ数流れにおいても、高迎角時には剥離剪断層が乱流に遷移することが、数値計算・実験両方で確認されており、この乱流遷移のマッハ数依存性や空力特性への影響の評価が課題である。今後はホットフィルム等を用いた遷移計測なども検討を行っている。 翼型の最適化に関しては現在首都大学東京と共同研究を行っており、数値計算による最適化手法の研究を進めると共に、計算により導かれる翼形状の低速風洞を用いた特性評価を行う予定としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東北大学所有の減圧風洞での実験のために必要な、流速計測のための消耗品、遷移計測用の翼模型、翼模型に埋め込む非定常圧力センサー等が挙げられる。特に非定常圧力センサーは1個当たり10万円超と高価であるが、風洞内の非定常変動を高精度に捉えるために必須なものである。首都大学東京所有の低速風洞用の実験に必要な消耗品も購入予定である。 東北大学との研究打合せや実験のため、また国内外の学会やセミナーに参加し成果を発信するための旅費も予定している。
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