2012 Fiscal Year Annual Research Report
低レイノルズ数環境での翼の非定常空力特性予測の研究
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23760169
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
池田 友明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発本部, 研究員 (00443276)
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Keywords | 航空宇宙工学 / 流体工学 |
Research Abstract |
高々度や火星大気などを想定した低密度流で実現する低レイノルズ数環境では、航空機の翼近傍で比較的大きなケールの渦変動が発生する。数値シミュレーション及び流れの安定性解析を用いると、高亜音速で渦変動が後縁近傍から発生する音波と共鳴し、カップリングを起こすことが予想される。本研究では、理論的に予測されるこの共鳴現象の存在を、実験的に捉えることを主目的とした。 実験には減圧型の東北大学火星大気風洞を用いた。本年度は、昨年度実施した風洞実験の詳細を理解する目的で、流路中に置かれた翼周り流れを数値シミュレーションにより再現し、流路による音響共鳴を考慮に入れた解析を行った。昨年度の風洞実験では、閉流路の幅により決定される離散的な共鳴が支配的になり、翼周り流れ特有のカップリングによる共鳴現象が実現しているかどうかは確認できなかった。しかしながら、高次精度圧縮性数値シミュレーションにより流れと音響変動を直接的に再現することで、実際の周波数は流路の共鳴のみで決定されるのではなく、渦変動と音波のカップリングにより周波数が離散的に選択され、さらに流路幅の共鳴周波数に近いモードが励起されることが確認された。 実験と数値計算との共鳴周波数は精度良く一致し、壁面の影響があってもカップリングが起きていることが確認された。さらに、動圧の低い火星大気風洞中の希薄流を熱線流速計により測定し、翼後流部の速度変動を取得することに成功した。その結果、実際に後流の渦変動も音響変動の周波数と一致し、フィードバックにより渦が励起されていることが確認された。 低レイノルズ数において音響変動とのカップリングによる共鳴周波数を実験的に明らかにしたのは、恐らく世界初の成果である。今後の低レイノルズ数翼型の空力設計に関して音響変動を含めた非定常変動の重要性が示され、工学的にも流体物理学の観点からも非常に重要な成果であると言える。
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